あるきだす言葉たちから
 
 
ながせ・とうご  1953年福島県生まれ 須賀川市在住
福島県文学賞 角川俳句賞  「橋朧-ふくしま記」
 
 
 
 
 
  真土
 
 
ふるさとのあをあをとあり寒月光
 
饅頭屋湯気立ててゐる路地の奥
 
餌やりに来て白鳥をこはがる子
 
狩人に被爆の森の白光す        被爆/ひばく
 
食物連鎖危ふし薬喰うまし        薬喰/くすりぐい
 
廃炉まで冬眠の熊起こすなよ
 
逃水を追ひ沈黙の町通る
 
吹かれ吹かれ古巣転がりゆくところ
 
荒野にはあらず全き菫かな
 
さへづりや真ん中にある線量計
 
忘るなと彼の日のように凍返る
 
除染土に咲くあれこれや明日葉も
 
なにごとの不思議なけれど子に春風
 
太陽に腹見せ乗込鮒笑ふ         乗込鮒/のつこみぶな
 
耕して握る真土やとこしなへ