あるきだす言葉たち   から
 
 
 
相沢 文子  1974年新潟市生まれ  ホトトギス所属  日本伝統俳句協会会員
 
 
 
 
盆の月
 
 
初秋の片手がポケットにすべる
 
秋暑し川の名前をまた忘れ
 
段ボール積み上げられし部屋残暑
 
読みさしのページに残る暑さかな
 
走馬灯まはり背筋を伸ばしけり
 
盆の月水の流れてゆく先に
 
坂道の多きふるさと盆の月
 
盆の月受話器しづかに置かれけり
 
耳鳴りのして踊子とすれ違う
 
窓の秋グランドピアノだけ光る
 
改札を出る人ばかり初嵐
 
枝豆を飲み込んでつまづく言葉
 
八月の夜に満ちてゆく人の声
 
一人きりで乗る文月のエレベーター
 
薬品に触るるカーテン涼新た