あるきだす言葉たち    朝日新聞夕刊
 
 
高坂 明良/こうさか あきら
2014年芝不器男賞対馬康子奨励賞  短歌/俳句は高坂明良 詩は葛原りょうで発表
 
 
 
子午線の海
 
 
 
人間が壊れて春の池にいた
 
子午線をくぐる息継ぎ海炎ゆる
 
土星へと巡回の海胆殖えにけり        海胆/うに
 
ライオンの大あくびかな春田打
 
空想を丸めて鶴の食事かな
 
さびしさの死角を打つや春の雷
 
蟻を踏むように心踏んでいる
 
揚羽死んでいっとき路傍の花となる
 
客がいない菓子盛りつけている
 
むくろとなるまであめつちもらう
 
余震ありアトリエ滅びいるかの巣
 
糸を吐く蚕や月の満ちるまで
 
玉ねぎの層のどこかにいる少女
 
不可触の移民の空よ浮いて来い
 
明日を断るすべておぼろのことなれば