あるきだす言葉たち      朝日新聞夕刊より
 
 
 
みえ・こうき  1965年鹿児島県生まれ  「銀化」同人  句集「鶏」  群像新人文学賞(評論部門)受賞
 
 
 
 
翔つパスタ
 
 
 
残照にそれぞれの恩鵙の贄      鵙/もず  贄/にへ
 
朝刊の短評欄に冬の馬走る      短評欄/コラム
 
昼の鳥だいこんにまだかたちあり
 
厨火の子猫ゆらぎの時雨かな     厨火/くりやび
 
ひきだしの茶碗とりだす落葉かな
 
掌に金柑ゆれて父笑う         掌/たなうら
 
ほほ寄せあふ海鼠腸すこし怖くて     海鼠腸/このわた
 
八方に冬の鵙翔つパスタかな     翔/た
 
楽章の間の咳さまざまに
 
はなみづも野薔薇のごとく光りけり
 
靴下を派手に猟期の教室は
 
首を掻く息子とふたり冬帽子
 
塩鮭のすこし巨きな背広かな     巨/おほ
 
ふゆぎくや昼のごぼうを箸で食ふ
 
筆箱に象が載つても枯月夜