深川夜遊
青くても有べきものを唐辛子 芭蕉
提ておもたき秋の新鍬 酒堂
暮の月槻のこつぱかたよせて 嵐蘭
坊主がしらの先にたたるる 岱水
松山の腰は躑躅の咲わたり 堂
焙炉の炭をくだす川舟 蕉
祝ひ日の冴かえりたる小豆粥 水
ふすま掴むで洗ふ油テ 蘭
掛乞に恋のこころを持せばや 蕉
翆簾にみぞるる下賀茂の社家 堂
寒徹す山雀籠の宙返り 蘭
正気散のむ風のかるさよ 水
目の張に先千石はしてやりて 堂
きゆる計に鐙をさゆる 焦
踏まよふ落花の雪の朝月夜 水
那智の御山の春遅き空 蘭
弓はじめすぐり立たるむす子供 蕉
荷とりに馬土の海へ飛びこむ 堂
町中の鳥居は赤くきよんとして 蘭
吹もしこらず野分しづまる 水
革足袋に地雪駄重き秋の下 堂
伏見あたりの古手屋の月 蕉
玉水の早苗と聞けば懐しや 水
我が跡からも鉦鼓うち来る 蘭
山伏を切てかけたる関の前 蕉
鎧もたねばならぬよの中 堂
付合は皆上戸にて呑あかし 蘭
さらりさらりと霰降也 水
乗物で和尚は礼にあるかるる 堂
たてこめてある道の大日 蕉
はご揚げて水田も暮る人の声 水
筵片荷に鯨さげゆ く 蘭
不断たつ池鯉鮒の宿の木綿市 蕉
ごを抱へこむ土間のへつつゐ 堂
米五升人がくれたる花見せむ 蘭
雉子のほろろにきほふ若草 水