同じく「現代俳句と20世紀」所収
もりや・しげやす 所属 豈/海程/逢
1995
ニ十世紀に長い余白の月のぼる
背中から土になる時桃咲くや
きよしこの夜街を覆えるひかりごけ
昼深く嗚咽に似たる旗あがる
真夜中に耳にひろがる沼おぼろ
春塵の光が積る映画館
象は去る地の結界となるために
縄文人の長髪混じる青嵐
環礁に乳歯のごとく湧く雲よ
原色で睡りは来たり背美鯨
永き日の楽器置場は黄泉の景
洪水を背置いて来たりなめくじり
切株に旅人の息水のごとし
バクダッドの空は束ねた曼珠沙華
秋風に銅版の馬瞬けり