仕事を終えて(実は中途半端のまま帰ろうとしているのかもしれない、やましい気持ちが少しだけある、でも退社時間である)帰ろうとして、いつものように歯間ブラシで歯の汚れを取ろうと洗面所に行く。洗面所はドアでふさがれている。もともとのドアは外されていて、そのドアで部屋をふさぐように立てかけてあるのだ。周辺は廃墟のようになっていて、いつものようにトイレは水浸しで、台所も広いが廃墟である。うろうろしていると元上司のTが僕をにらみつけて「お前帰るのか?」と言うので「帰りますよ」とこたえると「お前、よく帰れるよな、みな仕事してるんだぞ」と醜い顔をゆがませて怒り出す。
”何も他部門のお前に言われる筋合いはない”と思いながら「皆好きで働いているんでしょう? 僕には関係ないです、帰ります」というと「お前どうなるかわかってるんだろうな? お前みたいな奴は辞めちまえ」と言うから「ああ、そうですか、辞めましょう、じゃ社長に断ってきますから」といって社長がいる最上階の部署フロアに行くと、知らない連中が「徹夜になっても平気」といった感じで仕事をしている。
プロジェクターで何か資料を投射しながら打ち合わせもしている、だから部屋の中は映画館のように暗い。女性が話しかけてくる、たぶんYさんだろう。ロシア人? 外人のようでもある。笑いながらからかってそのまま行き過ぎる。男性社員に「社長は?」と聞くと、丁寧に「それを見てください」と社長の机の上を指さす。見れば僕が選挙手伝いをしているときの写真が載った新聞と、海外新聞がある。海外新聞には社長と思われる(でも知らない外人だ、これが社長なのか?)人物が表彰されている笑顔の写真が載っている。
「社長はバスで外国に出張していて、戻るには3-4日、長くて5-6日かかりますよ」と言う。「そう、ありがとう」と言って、しかたがないから、元上司のTは無視して(あとでぶんなぐってやる)、皆の前で堂々と「帰りますと言って帰るぞ」と決心して部署に戻ろうとするが、またまた自社ビルの中で迷うのである。自社ビルとは思うがデパートのようでもあり、ショッピングセンターの廃墟のようでもある。