「漫画家描画の現場」浦沢直樹の漫勉
漫画家の浦沢直樹さんが仕事現場ちいうか描画現場をNHKのTV番組のドキュメンタリーで公開している。手塚治虫さんが、亡くなる3年前に同局のドキュメンタリーで描画現場を公開したことに触発されたそうだ。
今の漫画家は、パソコンで描くことが多いようだ。すべてデジタル化されてGペンや製図インキを使うこともなくなっているようだ。それが良いこととは僕は思わない。実際にペンで描くのとタブレットを使用してデジタル描画することは全然違う。
デジタルならば瞬間的に修正できる。修正痕は紙面に残らないが、紙にペンで描く場合の終生はポスターカラーのホワイトなどで修正しなければならない。ヘタしたら紙の表面がごつごつとして油彩のように意識しないマチエールができてしまう。だから失敗しないように描画する必要があり、精神力も必要になる。浦沢さんのように描画現場を公開できるのは「デッサンを含む基本の描画力」があるからこその自信の表れだ。
僕が漫画家を目指していた頃、Gペンではなく丸ペンを、パイロットの製図インキ壷に浸しながらカリカリと気が遠くなるほどの時間をかけて描いたものだ。デッサン力がなかったから失敗を恐れた。怖くて仕方がなかった。
だから僕はトレストに行き着いた。僕は基本のデッサン力がない。だから自分を絵描きだなんて自称できる資格はない。ただ、絵は描きたいのだ。トレストならばできる。トレストならば絵が描けるのだ。
自分の構図で写真を撮ってそれをなぞり描きするのならばデッサン力は「ある程度」必要がない(本当は、なぞり描きでも実際は必要である)。またなぞり描いているうちにデッサン力も身についてくるから不思議だ。これだ!と僕は思った。自分で撮影するので構図力も身につく。トレストは絵が下手と言われる人たちの構図力とデッサン力の育成となる最終手段だと思っている。
なぞり描きした輪郭線は「塗り絵」の色がない線画と同じだから、元絵ができれば水彩、油彩、鉛筆、ペンなど画材は何でも自由に選べばいい。誰でも絵を楽しむことができる。
それを時間に余裕がある、「絵に自信がない」高齢者や、これから絵を勉強する子供に教えたい。なぞり描きは決してインチキではない。昔のようになぞって描くことを敬遠しては、軽蔑してはいけない。
さてさて、引き続き番組を注視したい。

浦沢直樹の漫勉