立花隆さんの「臨死体験」(文春文庫版)に特攻兵士T・Kさんの話が載っています。鹿児島県に住む特攻兵士の生き残りの方の話が興味深いのです。人は死ぬ直前に「幼児から現在までの記憶が走馬灯のように流れ見える」というのがあって、映画やドラマでも、よくそんなシーンが必ずありますね。ところがこの特攻兵士の方は、特攻直前ではなく、特攻隊に志願する際にその現象が起こったというのです。

昭和19年の秋、まだ予科練乙飛第二十期生だったT・Kさんは、突然、他の同期生とともに柔道場に集められました。そして「特攻隊に志願せよ」と告げられ、ガリ版刷りの1枚の紙が配られました。その紙には「①衷心より熱望、②熱望、③志願せず」と書いてあり、そのいずれかに丸を付けろと言うのです。

T・Kさんは、その紙を見て戦慄が走ります。胸に恐怖感の様なものが湧いてきて、やるせない気持ちになってしまいます。米国との戦争で敗退が続いている国難に殉じる気持ちはあるのですが、いざとなると冷静を保ってはいられなかったのですね。すると突然、茫然自失の状態になって、あの「走馬灯のように記憶が流れ見える」現象に陥ったそうです。それもほんの数秒のできごとだったそうです。

そして、「泣こかい飛ぼかい。泣ッよかヒッ飛べ」という幼児の頃の父母の言葉が頭に浮かび「武門の家に生まれ、秘境臆病者にはなれない」と「衷心より熱望」に三重丸を付けます。頭を上げると何か異様な熱気が渦巻いていて、線香の灰が落ちても聞こえるほどの静寂でした。

これを人生パノラマ回顧というのだそうです。んで、人生パノラマ解雇なら僕のことでしょうかね\(//∇//)\