タイトルは友達の歌の曲名。
興味を持ってくれた方は動画サイトで検索してみて欲しい。多分上のほうに出てくるので。
まぁその友達は今逢えない場所にいるんだけれど。三年前に遠くの方に行ってしまったんだ。
ニルヴァーナに憧れてギターをかき鳴らしてた彼。スカしたお洒落イケメンだった。
当時、アパレル店員を辞めて地元に戻ってきて無職だった自分はカスの様にだらだら暇を持て余し漫画や小説を読み漁り、パチンコに行ったりするクズのお手本のような時間を過ごしていた。そんな時、偶然地元のパチ屋でその彼と再会した。
だらっと二人で少しパチンコした後、その場の勢いでラーメンを食いに行く流れになり、互いの近況報告をした。
「今アパレル店員辞めて無職なんさ」
『マジすか。今ちょうどうちの店、店員募集してますよ。聞いてみましょうか』
「おー、聞いてみて。ありがとー」
口約束程度に思っていたら翌日電話がきた。
『言っときました!いつ面接来れますか?明後日あたり来れます?』
マジか。急だなと思いながらも慌てて証明写真を撮って履歴書を書いた。
恥ずかしながらスーツを着て面接、というのが専門卒業時に新卒で勤めた会社の時しか経験が無く、当時好きだったブランドのダメージジーンズを履いて私服で面接に行った。パンクを履き違えているにも程があるぞ当時の自分。
そんなガッツリ膝に穴が空き、布パッチが縫い付けられているスリムジーンズで面接に行った。
「よろしくお願いします。失礼します」
『お願いします。あ、そのパンツSEXPOTですね』
ここでようやく我に返り、お前面接時に何してんねん状態になる。
「しし、失礼しました!面接なのにこんな服装で…」
『いえ、私もそのブランド好きでよく着てるんですよ』
マジか。と思って見たら店長さんラバーソール履いてた。
そもそも履歴書をきちんと記入してくる人のほうが少ないらしく、面接の翌日には採用の連絡がきて翌週から働くことが決まった。
その後、彼が市内の古着屋で働くことになるまでの約二年ほどその店で一緒に働いた。
シフトが同じ時間帯なので、仕事終わりに隣のライブハウスに遊びに行ったり、休みの日に一緒に服を買いに行ったりもしていた。
レザークラフトが流行った時は二人で市内に一式を買いに行き、二人してレザーブレスを作るものの、それで満足し、一瞬で飽きた。作ったあれどこに行ったんだろう。
他にも同じシフトに入っている先輩の似顔絵をあまりに彼が特徴を捉えて書くものだから、自分もメモ帳に書くようになり、気づけば他のスタッフを巻き込み、交代でその先輩をテーマにした1コマ漫画を休憩時に描き合う日々が続いた。これは彼がスタッフを卒業するまで続き、メモ帳が二桁になるまで書き続けた。
そんなこんなで市内に移り住みながらもバンドを続けていた彼と、デザインで収入を得られるようになった当時の自分で昔ほど濃密ではないにしろ、時間が合えば彼のライブを観に行ったり、彼の手書きのイラストをロゴに起こしたりしてた。自分も当時環境が変わり、彼が地元に戻って働いてる事は聞きつつも中々逢えていない中で彼が遠くに行ってしまったとの知らせを聞いた。
もっと逢っておけば良かった。
もっと彼のライブに通っておけば良かった。
彼の働く店にもっと顔出しに行っておけば良かった。
後悔先に立たず、という言葉が本当に刺さる。何か出来た訳ではないけども、もっと逢っておきたかったなぁと今でも思う。
『歌も名前も残せなかった』
彼が歌う歌詞の一小節だ。
大丈夫。君が望む形とはちょっと違うかもしれないけれど、君の歌も名前もまだ残ってるし、歌われてるから。
今日のこの日も、君の歌を地元や市内で歌う人達がいるから。
スカした君が、そのステージを上から観てくれていますように。