やっぱり、紙の本 ─『最果てアーケード』(小川洋子)─ | 出会った言葉たち ― 披沙揀金 ―

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「披沙揀金」―砂をより分けて金を取り出す、の意。
日常出会う砂金のような言葉たちを集めました。

 「あなたは、電子書籍派? 紙派?」では、「本は紙!」とのコメントをたくさんいただいて、嬉しく思いました。

 コメントの数は、私の短いブログ歴の中で、最上位を飾りました。

 ありがとうございました。

 

 この話題について、もう一つだけ。

 小川洋子さんの『最果てアーケード』の中に、私の中にしっくりと落ちてくる描写がありましたので、紹介します。

 

 新しい本を一冊、棚の奥にすっと滑り込ませる感触が私は好きだった。それを読むのと同じくらいの、胸の高鳴りを覚えた。一冊分の厚みだけ自分の世界が広がったようで、なぜかしら誰にともなく自慢したい気分になった。

 
 「本ばかり読まないで、現実の世界を見よう。世界が一冊の書物だ。」という意見があることは承知の上で、でも、書物は、確かに自分の心の中の世界を作っていくのです。
 
 昔、寺山修司は「書を捨てよ、町へ出よう」と言った。彼はその時、気付いていなかった。書物がそのまま町であることに。(池澤夏樹『知の仕事術』)