30年越しの夢が、

叶った、とも言える。

叶わなかった、とも言える。

多分、ちょっと馬鹿馬鹿しい話だ。

でも、30年かかった。

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少し長い話になる。

当時、僕は結構色々スニーカー持っていて、

(今も持ってるけど)

「アディダス・スーパースター」に関しては、

1、白地に黒線、

2、黒字に、線と爪先とソールが白

そして、「白地に、線と爪先とソールが黒」

という配色を持っていた。

特に3番目が起気に入りだった。

これを、パンダ、と呼んでいた。

いつからいつまで所有していたのか、はっきりは覚えていないが、僕が宝石鑑定士の資格をとったときには持っていて、オーストラリアに永住しに行くときには捨てた。

おそらくは1995年頃に捨てたのだと思う。ㅤㅤ

当時の僕は、三種とも(通常配色)なのだと思っていた。

だから、ガンガン履いた。

アディダスのスーパースターは、皮が慣れて柔らかくなると、

足の形に皮が伸びて、靴紐で締め上げると足のシルエットそのままみたいに形になっていく。

そうなったパンダは、僕が歴代持っていたスニーカーの中で、

一番かっこいい靴だった。

おそらく1995年ごろ、だいぶヨレヨレになったから買い替えようと靴屋さんに行くと、パンダ配色は無い、

レギュラーラインじゃ無いから、取り寄せもできない。

「え・・・」

それから、1年くらい、京都、大阪、近辺でずいぶん探したけれど、どこにもなかった。

仕方なく、まあ、でも、そんなもんだよね、って事で諦めた。

オーストラリア在住時代も、靴屋さんを見つけると、ついつい探した。いつの間にか、地元ゴールドコーストは当たり前、

ブリスベンでも、シドニーでも、メルボルンでも、靴屋さんを見つけると、

「僕の、パンダのスーパースター」

を無意識に探すのが当たり前になっていた。

結局見つかることのないまま、2013年に日本に完全帰国した。

その間に、アディダス・スーパースターは、

靴紐の下の「ベロ」と呼ばれる部分にスポンジを入れて、

合成皮革になって、少し値段も安くなった。

ハイテクシューズ全盛の時代になって、

決して履き心地のいい靴ではない、前時代的なスーパースターは、そうやって生き残りに賭けたんだろう。    

2017年、メルボルンに行った時に、ベロにスポンジを入っている、パンダを見つけた。

よほど、買おうと思ったけれど、なんだか、ここでそれを買うと、僕の、あのパンダ、はもう手に入らない気がしてやめた。

それからしばらくして、2021年。

アディダスのサイトでセールで売られているのを見つけて驚いた。

僕が昔持っていたのは、白が少しきなりの白で、

この時見つけたのは、カラッと真っ白。

通常のアディダスの白だった。ベロは昔の1枚皮だった。

もう、それでいい、

買おうと思ったら、

サイズがもうなくなっていた。

たった0.5センチの差で、なくなっていた。

セールじゃなくていい、1ヶ月くらい前に見つけていれば、買えたんだ。この時、本当に何か、一つ、糸が切れたような気がした。

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今度見つけたら、同じでなくていい、近いもの、でいい。

記念に買おう、って思った。

インフルエンザがだいぶ良くなって、

少し起き出してきてYahooを見たら、右側にアディダスの広告が出ていた。

パンダだった。

驚いてアディダスのサイトを開けて見たら、

翌日の10時に発売開始のカウントダウンをしていた。

だが、よく見ると、僕の持っていたパンダではなく、

白地の皮が、ヌバックに近い、艶消しのものだった。

でも、ベロは一枚皮のあの時代のスタイルだった。 

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実は、僕はこの皮の全部白のスーパースターを持っていたことがある。だから、テクスチャーの感じとかもよく知ってる。

なんだろう、違うぢゃん!!というがっかりはなくて、、

不思議と、これでいいじゃん、と素直に思えた。

この皮のパンダ、なんかそれはそれでいい、って思えた。

そしたら、30年かぁ、って・・

あの頃、あのパンダとチャコールのスーツで友達の結婚式に出席した事とか、あのパンダに黒い短パンと白いシャツで言わば全身パンダで夏の河原町を歩いていた事とか、

なんか色々感慨深いなぁ、、って。

で、、販売開始、10秒前のスクショ撮っちゃった。

配達されてきた新しいパンダは、僕の思った通りの物だった。

ヌバックに近い、ツルツルしていない艶消しの皮。

だから、若干グレーっぽくも見える。

大事に、大事に、汚れないように、傷まないように

なんて履き方はしない。

また、ガンガン履いて、ダメになったら、30年後88歳の時に、新しいのを見つけてやる。
 
 

ㅤㅤ

なんか、久しぶりに履いた、

アディダス・スーパースター、27cm

こんなに僕の足にピッタリだったかなぁ、

くらい、しっくりくる。

こうなると、、、あの頃の1、2番

1、白地に黒線、

2、黒字に、線と爪先とソールが白ㅤ

が欲しいと思う悪循環。