受けの芝居に関して | カイエン帯

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昨日の記事で、「受けの芝居」という表現を使いました。武藤志織さん作の朗読劇に於いて、中村由香里さんが繰り出す変幻自在のエキセントリックな芝居に対しての、七海とろろさんの芝居をこう表現した訳ですが、今回はこの「受けの芝居」について少し書きます。


当然の事ながら、以前は芝居に関して深く洞察はせず、ただ個人の芝居にフォーカスして映画やテレビドラマ等を観ていました。

その意識が変化したのは、大分前の事ですが、松方弘樹さんのインタビューが何かを読んだ事がキッカケです。

ここで松方さんは、かつて御自身が出演した映画「柳生一族の陰謀」(深作欣二監督作品)での萬屋錦之介さんのラストの芝居について触れていました。ネタバレになりそうなので詳しくは書きませんが、萬屋さん演じる柳生但馬守宗矩が最後に江戸城内でこう喚くのです。

「これは夢じゃ、夢にござぁ〜い!」

私もこの映画をDVDで観たのですが、この時の萬屋さんの芝居はかなり大仰なものでした。リハーサルか本番かは失念しましたが、現場でこの芝居を目の当たりにした松方さんは、萬屋さんにこう苦言を呈したそうです。

「錦兄ィ(松方さんは萬屋さんをこう呼んでいたそうです)、それじゃ受けられないよ」

つまり、萬屋さんの芝居があまりにも強烈なので、相手役は誰も受けて芝居ができないと仰っているのです。

この記事を読んで以降、私の芝居の見方は明らかに変わりました。

物凄く押し出しの強い芝居をする役者だけでなく、その芝居を受けて応じる側の役者にもフォーカスする様になったのです。

その過程があったからこそ、私は七海とろろさんの芝居の上手さに気づけたと言えるでしょう。


受けの芝居に関しては、世の中でバイプレイヤーと呼ばれる役者の方が評価されそうな気がします。現在放送中の大河ドラマ「どうする家康」にも、受けの芝居が達者な役者が多数出演していますし、東映特撮ヒーロードラマのレギュラー出演者に必ずひとりはベテランの役者が配されているのも、若い役者の血気盛んな芝居を懐深く受けて貰える期待故でしょう。


ドラマや映画、舞台等を観る時は、個性の強い役者だけでなく、その反対側に居る役者に注目するのも良いと思います。では今回はこの辺で。