おはようございます。

常楽です。

 

今週もあなたを感情旅行に

ご招待させていただきます。

 

実際に体験するのは大変だけど、

映画でなら没入して

臨場感を感じると

それに近い体験ができます。

 

その体験が

心を豊かにしてくれます。

 

私と感覚が近い方なら、

より楽しんでいただけます。

 

さあ、感情旅行に出かけましょう。

 

 

 

■ダークウォーターズ

 巨大企業が怖れた男

今回の映画は『ダークウォーターズ 巨大企業が怖れた男』です。

 

2019年アメリカ映画です。

 

この映画は、終始、地味です。地味だけど、すべてが実名であり、事実に基づいて作っており、その一貫した空気感に、静かだが強く心打たれました。

 

この映画は、製作/主演のマーク・ラファロが、ニューヨークタイムズ紙の2016年1月6日のナサニエル・リッチによる記事『デュポンにとって最悪の悪夢になった弁護士』を見たことから始まります。そこにはウェストバージニア州の人々の環境を汚染する巨大企業と何十年にもわたってたたかう一人の弁護士のことが書かれていました。その記事に感動したラファロは、映画化の権利を買い取り、映画の製作へと踏み出したのです。

 

ラファロは、アベンジャーズのハルク役で知ってる人も多いでしょうが、環境活動家としても有名で、今回の映画に対する尋常ではない思いを感じます。教会における男児の性虐待問題を取り上げた『スポットライト 世紀のスクープ』(2015)にはとても感銘を受けました。『フォックスキャッチャー』(2014)でも、デュポン社とたたかっており、この映画で2度目のたたかいとなります。1度目はやられましたが、2度目は勝利しています。なお、これら2作品と『キッズ・オールライト』(2010)では、それぞれアカデミー助演男優賞にノミネートされました。

 

物語は、1998年のウエストバージニア州パーカーズバーグにある農場から始まります。牛が190頭も病死してしまって、主のウィルバー・テナントは困り果てます。同じ村に住む女性の孫がオハイオ州シンシナティの名門法律事務所の弁護士であることから、他にあてもないため彼はその弁護士に会いに行きます。その弁護士が、ラファロ演じるロブ(ロバート・ビロット)というわけです。

 

テナントの話に異常な様子を感じたロブは、視察のために現地に行きました。行くと、現地の人たちの歯が真っ黒なことや、病死した牛の異常さや、奇形で生まれた牛などを見て、まさに異常事態であることを感じます。

 

調べていくと川の上流にデュポン社が何かを垂れ流しているとわかり、その中の成分に「PFOA」があり、これがこの異常事態に深く関係していることがわかります。しかし「PFOA」とは何かをいくら調べても、何も出てきません。調べを進める中で出会った科学者に相談すると「PFOAはわからないがPFOSなら知っている」との答えをもらいます。

 

ロブは、持ち合わせの情報だけでデュポン社に裁判を起こします。そこでデュポン社に”「PFOA」とは何か?がわかる資料”の提出を請求します。デュポン社はそれを認めますが、届いた資料は何十個もの段ボールでした。11万ページ以上ある資料の中の「どこかに書いてあるから自分で調べてね」ということです。ロブはそれをそのまま受け、一人で資料の調べを進めます。

 

ロブは、これだけの資料を一人で調べるとすれば、他のことをやっている時間もないため、ほぼこの件だけの専業となります。しかし、この件だけをやっていても収入は入ってこないので、無償奉仕です。唯一の救いは、彼の妻が彼を支援していることです。ロブの、この無償奉仕ともいえる活動がなければ「PFOA」による汚染は世界中で続いていたと思うと、彼とその家族には、本当に頭が下がります。

 

資料を調べるうちに、驚愕の事実を知ることとなります。デュポン社は「PFOA」が有毒であることを1950年代に、すでに知っていたのです。動物実験などで有害と知っていたのに、それを川に垂れ流し続けたのです。さらにひどいことにデュポン社は「PFOA」が入ったタバコを自社の従業員に配ることで人体実験をしていたのです。おかげで多くの社員がその犠牲となりました。これに毒された母親から通常ではない状態で生まれてきた子どももいました。

 

事実を知ったロブは、7万人の被害者たちとデュポン社を相手に集団訴訟を起こそうとします。しかし、「PFOA」が有毒である実験データはデュポン社にしかなく、裁判の証拠となる客観的データが存在していなかったため、まずこのデータを集めることをしなければなりませんでした。そのためには被害者たちから血液を集め、科学的な分析をする必要があります。これには膨大な時間がかかります。

 

客観的データを集めている間にも、ロブの生活は続きますが、収入がないために追い込まれていきます。ロブの所属している事務所はデュポン社をはじめとした大企業のお抱え事務所であったことから、事務所からも追い込まれていきます。大きなストレスによる脳に血液が行かなくなる症状で倒れることもありました。それでも現地のガソリンスタンドで会った先天性異常の若者のことを思うと、自分はたたかわなければならないと立ち上がり続けます。この若者は、特殊メイクではなく、本当にデュポンにやられたせいで、通常でない身体で生まれた人が出演し、本人役を演じています。

 

そうしてボロボロになりながら戦い続けて7年経った2011年のある日、ようやく客観的データができた連絡がロブに入ります。このデータがあれば、「PFOA」は人体に有害であると証明できるのです。そこから「PFOA」による環境汚染の裁判を起こします。裁判を続けて2017年にようやく判決が出ます。それは、デュポン社が6億7000万ドルの賠償金を支払う、というものでした。ロブは、20年近くもたたかい続けて、勝ったのです。

 

この判決は画期的で、ここから「PFOA」の使用禁止が世界中で起きることとなります。

 

「PFOA」とは有機フッ素化合物のペルフルオロオクタン酸のことで、私たちに身近なところではフライパンのテフロン加工等に使われていました。この成分は、身体に入ると対外に排泄されることがなく、身体中を巡り、巡る中で身体中を傷つけていく、という人体にとても有害なものです。なお、「PFOS」はペルフルオロオクタンスルホン酸のことで「PFOA」と同じく人体に有害です。

 

「PFOA」が人体に有害であると判明したことで、デュポン社以外でも「PFOA」使用で訴えられたりしており、現在でもこの関係の訴訟は続いているそうです。日本でも「PFOS」が科学消火剤に含まれていることが問題になりました。

 

もしロブが「お金もらえないからやめる」などとして、11万ページの資料を調べることをやめていたら、今でも私たち人類は、危険な物質を「危険じゃないもの」として認識していたことになります。そして、ラファロがこの事件を映画化してくれなかったら、こんなことがあったことを知ることもなかったかもしれません。ロブ、そしてラファロの博愛ある貢献に、深い感謝を感じます。

 

 

この映画の主人公ロブは、デュポン社が他者の甚大な犠牲の上に莫大な個人的的利益を築きあげていることを知り、自分にはその犠牲を改善できる力があるとして、この事実に立ち向かう決意をします。それは、今を生きる人類だけでなく、未来のすべての人類の犠牲を改善するという、極めて大きな貢献になるとわかったからでしょう。

 

通常「自分より相手優先」の行動をとることは困難です。「自分より相手優先」なので、自分の富や名声を得ることは二の次で”貢献の相手の利益”を優先することになるからです。しかし、何に貢献するのかが具体的になると、その困難をやすやすと克服する力が私たちには、あります。その心の力を、私たちは「勇気」と呼びます。

 

ロブのしてくれたような社会貢献には及ばずとも「自分だからできること」「自分にしかできないこと」を見つけたら勇気を使って貢献へと踏み出したいと感じます。

 

 

 

 

 

お読みいただき、ありがとうございます。

中村常楽でした。

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 







 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









 

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