こんなあからさまな詐欺に、まさか自分が引っ掛かるとは思ってもいなかった夫。
でも実際、その場面にいると、あれよあれよという間にうまく誘導されて多額を振り込まされてしまうようです。
後で我に返って、なぜ自分があんな詐欺に遭ってしまったのか、
ちょっとおかしいなと思った時に、そこまでの金額は諦めて電話を切ってしまえばここまで膨大な被害額にならなかったのに・・・
と、夫は何度も何度もその時のことを反芻して苦しんでいます。
私にも何度も「俺はなんて馬鹿なんだ!すまない!」と泣きながら謝るのです。
詐欺師にはもちろん腹が立つけど、それ以上に呆気なく騙されてしまった自分の不甲斐なさに腹を立てているようです。
もちろん多額の貯金を無くしてしまったショックは私だって同じです。
でもそれより今は、夫の精神状態が心配でした。
お金をごっそり盗られた上に、夫の精神も壊されてはたまりません。
なので、夫の前では私はお金を取られたことに対しての絶望感は極力見せないようにしました。
そしてとりあえず、近場のメンタルクリニックをいくつか調べ、その中の数軒をピックアップし、電話して予約を取るように夫にアドバイスしました。
しかし、今のご時世、メンタルクリニックはやはり需要が多いらしく、ひとつ目は1ヶ月以上先の予約しか取れそうにありませんでした。そしてふたつ目で10日後の予約がなんとか取れました。
しかし夫の状態はずっと苦しそうな表情をしていて、何度も大きなため息をつき、夜もまともに眠れてないようです。
10日後の受診までこれではもたないと思い、私の持っている薬を渡しました。
夫はだいぶ以前に一度、職場環境が原因でメンタルクリニックに通っていたことがあり、私も昔から軽いパニック発作のようなものに悩まされていたので、かかりつけの医師に抗不安薬と軽い睡眠剤を処方してもらって常備していたのです。
本当は自分に処方された薬を他人に飲ませることはよくないけど、背に腹はかえられません。
このままだと夫が壊れてしまいますから。
それに私は一応医療従事者なので、その辺の加減は一般人よりは詳しいのではないかと。
夫はその薬のおかげで日中もなんとか精神を保てるようになり、夜も薬の力を借りて眠れるようになりました。