その乳幼児のひげは、個人情報保護法などあざ笑うかのようにすぐさま全国に知れ渡った。こんなおいしいニュースヴァリューのある情報はどこにも転がっていない。テレビニュース、情報番組がこぞって放送し、週刊誌は当たり前のように連載を開始した。

 

 しかし、SNS上で、可哀相との声が広がり、一時期、社会問題として取り上げられもしたので、ひげのある乳幼児は何度も、両親の意図しない形で、YouTubeなどで拡散された。最初は面白がって覗いたりしていた人たちも、みんな次第にその映像に罪悪感と共にあぐみが出てきて、関心は次第に薄れていった。

 

 だが、一部のユーザーからのSNS上での罵詈雑言は、『室多瑠多』が卒園する5歳まで続いた。しかし、両親が『室多瑠多』にSNS等々を見せないよう注力し、結局防衛のために手に取りやすいスマフォは所持しないことにして対処した。ただ、パソコンだけは必要なものとして所有していたので、ネット上でのサイト管理者に『室多瑠多』への不適切な文章の削除などは依頼しておいた。そのため『室多瑠多』はその罵詈雑言には気付かずに成長したのだった。

 

 もっともスマフォの不所持やパソコンの監視を両親が徹底しだした時期は、『室多瑠多』自身の物心すらついていなかった時期と重なるため、理解しようにも『室多瑠多』には理解できなかったであろう。

 

女児の両親は、我が児を守り抜く強い決意ゆえ、心配に心配を重ね、ネット上で『室多瑠多』を助けられないかと、藁をもつかむ思いで検索した。

 その結果、すぐに永久脱毛にたどり着いた。だが、女児があまりにも幼過ぎたため永久脱毛という行動を起こせなかった。

 

 それにより、『室多瑠多』のひげは両親やその関係者が剃ることになった。

 

                                                                   つづく(全7回)