昔、好きで好きでしようがなかったあのひとが夢に出てきた。もう10年近く会っていないし、夢に出てきたのも久しぶり。


夢のなかで、わたしたちはレストランのテーブルに向かい合って座っていた。お互いすこしはにかみながらお酒を飲んで、オリーブをつまんで、遠慮がちに視線を外しながらも笑顔を交わして、再会できたことを喜んでいた。

――ああ、このひとってこんな顔で笑っていたっけ。そうそう、顎の角度と柔らかい髭が好きだった。手首のこの骨が好きだった。ふと動く時に漂ってくるアルマーニマニアの香りがいっそう切なかった。抱きとめられた時の胸の広さと体温が甦ってきた。

もう一度、このひとの胸に抱かれてみたいな、なんて不埒なことを考えると場面は移り変わり(何せ夢だから)わたしたちはわたしの家にいて、手指を絡めながらこっそり寝室に入り込もうとしていて……

……というところで夢から覚めたのだった。ちっ←



階下に降りていくと「昨夜、夜なべしてマーマレードを作ったんだよ」と、夫が満面の笑顔でハグしてきた(わたしは子と寝落ちしていたのです)。

そんな夜なべマーマレードとパンケーキ、フルーツサラダで夫プロデュースの朝ごはん。イッタラのセラドングリーンは朝によく合う。写真ではわかりづらいけれど、パンケーキには自家製夏みかんシロップもかかっています。
201602221

すこしの罪悪感を抱きながら食べるパンケーキはいつものように温かくて、美味しくて、いつものように安心と信頼の味がした。



夢に出てきたあのひとのことは、自分が壊れてバラバラになっちゃいそうなくらい好きだった。生涯いちばんの大恋愛だったと懐かしく思い出すけれど、わたしはこのひと(夫)と結婚してよかったなとしみじみ思ったのでした。