多恵子おばちゃんと一緒に、待ち合わせ場所のホテルロビーに行くと、
北川さん親子はもう到着していた。
「多恵子さーん」
「あ、北川さん」
「私はこっそり隠れているわね」
そう言うと、北川のおばさんは離れて行った。
「はじめまして」
「はじめまして」
一目ですぐに、北川さんの娘さんだとわかった。
北川誠さんの従姉妹というだけあって、面影があり、
誠さんとのお見合いで傷ついていた心が痛んだ。
間もなく小泉さんは現れた。
写真どおりだった。
ソファーにどっかり腰を下ろして脚を組むと、
すぐに灰皿を引き寄せてタバコを吸い始めた。
40歳で副部長という肩書きどおり、貫禄はあった。
パソコンの基盤を作る会社ということだったが、
仕事の詳しい内容はわからなかった。
あまりに横柄な態度に、私自身も妙な感情がわいてしまい、
「会社では禁煙の動きはないんですか?」
「いや、喫煙者が多いからそれはないね」
小泉さんはそう言うと、口から大きく煙を吐いた。
小泉さんは、私のことをどんな風に聞いていたのか、
結婚後は家庭に入り、家計をしっかり切り盛りすることを
当然のこととして考えている方だった。
「私は、結婚後も仕事を続けたいと思っていますし、
仕事を続けている人がほとんどです。」
きっぱりと答えた。
小泉さんと結婚する気持ちになれる可能性は
ゼロだと確信した。