土曜日、多恵子おばちゃんちに写真を見せてもらいに行った。
「あ、ゆりちゃん、今からご近所さんのところに一緒に行こ!」
ご近所さんのお宅は、多恵子おばちゃんの家から5軒ほど隣の家だった。
この周辺でもひときわ目立つ、農家の旧家という感じだった。
「北川さーん!写真見に来たよ!」
「はーい」
笑顔のステキな割烹着を着たおばさんが、いそいそと玄関に現れた。
「あ、この娘さんがまーちゃんとお見合いしたっていう方?」
北川さんは誠さん。まーちゃんと呼ばれているようだった。
「さ、あがってあがって。」
客間に通された。
「まーちゃんのことはごめんねぇ。ウチの娘はその話を聞いてすぐに、
会社に写真持って行ってくれたの。まーちゃんと違って行動派だからねぇ。」
おばさんは弁解するように話し続けた。
「娘は24歳で恋愛結婚しちゃったから、お見合いのことはわからないって。
でも、当日は参加するって言ってたわ」
写真を見せられた。
半そでのアロハシャツを着た小太り気味の男性が、自分の車と一緒に写真に写っていた。
期待以上でも、以下でもなかった。
「小泉さんはね、外車に乗っていらっしゃるそうよ」
写真をよく見ると、プジョーのようだった。
このおばさんにとって外車に乗っている男性というのは、
魅力ポイントの一つであるらしい。
「スリムな方ではないねぇ?」
多恵子おばちゃんが遠慮気味に言った。
「これ、去年の夏の写真でしょ?今、もう少し痩せてらっしゃるかもしれないし、
この立ち方とかこの洋服、太って見えるのかもしれないわ」
おばさんは必死にフォローしていた。
私の偏見かもしれないけれど、
自分の体型あるいは収入に不釣合いな車に乗る男性は、
コンプレックスが強いタイプが多いと思っている。
お見合いの時間を割く必要が緊急にあるとは思えなかった。
「すみませんが、このお話なかったことにしてもらえませんか?」
何度かお願いしたけれど、聞き入れてもらえずに翌日のお見合いが決まった。
紹介者が多すぎるのもおかしいということで、
多恵子おばちゃんと北川さんの娘さんだけが参加して、
北川さんは物陰に隠れて(笑)様子を見ているとのことだった。
大根、白菜、干し柿・・・
地元の婦人会で昨日作ったというおはぎを大量に持たされた。
お見合い料金!?
せめてもの条件をつけてもらった。
「4人でお話して、終わったころ多恵子おばちゃんが私に
『どうする?』って聞いてくれない?
もしステキな方だったらもう少しお話したいって言うし、
そうでない時は切り上げるから。」
こうしてお見合いが決まった。