終わった
建物に貴章が消えた時
めっちゃ涙が流れてきた
ここに
貴章を
残していくんだ
建物に消える前に
頑張れ！貴章！
そう一言だけ言った
コクリ
と貴章が頭を下げた
私は
私には
そんな言葉しか
言えなかった
なんで
こんなに涙が出るんだろ
切なくて
切なくて
切なくて
まだ
マスクしていたから
涙で顔が
グチャグチャだった
周りに知ってる人は
誰もいない
駐車場の車の中で
また
泣いてしまっていた
栃木SCのエンブレムの前で
凛々しい矢野貴章だった
昨日
新潟の激励会に行くんですよね
そう
私に言った貴章
私が毎年
激励会を楽しみにしていることを
わかっているんだ
いいえ
今日はここに泊まって
明日は
栃木SCの必勝祈願祭に行きます
そう言ったんだ
栃木は私にとって
初めての土地だ
ホテルに着いたのは
18時を過ぎていた
それから
下見に行ったんだ
下見はとても大事だ
選手が参拝する神社で
私も参拝した
イベント開催の広場を確認
写真を撮る
お隣の建物の6階
写真を撮って
見取図を頭に叩き込んだ
この近くに車を停めないと
周りの駐車場をチェックして
この広場に1番近い駐車場を確認した
ベストの状態で
祈願祭を迎えたかったんだ
朝
8時過ぎ
ホテルを出て
車をその駐車場に停めた
広場では
必勝祈願祭の準備が始まっていた
後援会 ユニ等の受付は10時半頃だったが
お初の私には
待ってるしかなかったんだ
まだずいぶん早かったが
ブースの担当さんに
申込みの用紙もらえませんか
と言い
用紙をもらった
ファンクラブの申込み
ユニの申込み
シーパスの申込み
の3枚を書いた
そして
後援会の申込みも
私には
ファンクラブと後援会の違いがわからなかった
でも
全部の申込みをした
いったいいくらだったのか
計算してる頭は私にはなかった
後援会のイベントで
選手との対面が
広場隣の建物であった
昨日チェックした
あの6階だった
そこに行くと
選手がミーティングしているような姿が見えていた
11時半
私達全員に
インフルエンザ予防のため
マスクが配られた
手の消毒もした
中に入ると
前に選手がずらりとマスク姿で立っていた
目に飛び込んでくるのは
貴章の姿だけだ
あ！
貴章マスクしていない
何故か
すぐにわかった
マスク姿の写真がほしいサポはいないだろう
矢野貴章のお披露目にマスクはいらない
それが日本代表を務めた貴章の姿勢だったんだ
僕の姿を見てくれ
そう言ってるようだった
素敵だよ
貴章
この密室の中で
貴章の前にファンサの列が出来ていた
だよね
カッコいいもん
監督のところに行った
昨日練習が面白かったと言った私です
みんながマスクしているから
誰かわからない
あーあ
そう言い
監督はマスクをとってくれた
新潟から来ました
貴章に着いて来ました
監督は言った
このチームにプレイスタイルが合うと思ったのできてもらいました
と
はい FWもSBも出来ます
どんなに走っても体力は尽きませんので
でも足元が……
わかっていますよ
このチームには上手い選手はいません
みんなそうでもない選手
でも栃木はみんなで走って泥臭いサッカーしていきます
それに貴章はピッタリだったので
ああ
よく観ててくれた
そう思った
監督
貴章をお願いします
私
新潟サポなので
そうたくさんは来られないので
どうかどうか貴章をお願いします
この監督に貴章を託していこう
親でも
何でもない私の話を監督は聞いてくれたんだ
そこではずーっと
貴章を観ていた
もちろんサインももらった
昨日とは違う一言を入れてもらったんだ
そして
広場に戻って待っていた
13時半
オープニングが終わって選手入場
アレ 貴章の足元
黄色いソックスが見えた
ユニのお披露目は貴章なんだ
新潟では若手がそれをする
こんな寒い外で
貴章ですか？
選手と共に神社に向かい参拝して
その後
雛壇に選手が勢揃いした
そして
ユニお披露目だ
貴章がベンチコートを脱いだ時
どよめきが起こった
この
エンブレムの真ん中で
矢野貴章が栃木SCのユニを着ていることは
栃木SCが矢野貴章に1番期待しているということだ
貴章
ユニ
似合っているよ
入れた名前も
KISHOだった
うん
私も
KISHOが好きだ
そうしてくれたんだ
それから
外でのファンサがあった
貴章の列は長かった
この列の長さでも
貴章に期待してるのがよくわかったんだ
私は遠くで
その列を眺めていた
栃木のサポを虜にしてやれ貴章！
私は貴章のサインがほしいわけでも
一緒に写真撮りたいわけでもない
ただただ
貴章の立場立ち位置が知りたかった
この監督なら
貴章を最大限活かしてくれる
そう思った
全部
終わり
選手退場
建物の入り口近くに立っていた
建物に貴章が消えた時
めっちゃ涙が流れてきた
ここに
貴章を
残していくんだ
建物に消える前に
頑張れ！貴章！
そう一言だけ言った
コクリ
と貴章が頭を下げた
私は
私には
そんな言葉しか
言えなかった
なんで
こんなに涙が出るんだろ
切なくて
切なくて
切なくて
まだ
マスクしていたから
涙で顔が
グチャグチャだった
周りに知ってる人は
誰もいない
駐車場の車の中で
また
泣いてしまっていた
これから
新潟まで
300kmの運転だ
でも
涙がこぼれて
前がよく見えないの
貴章
ごめんよ
晴れの日に
私
こんなに泣いちゃてさ
私
心がいたいの
痛いの
栃木から
新潟への
車の中
ずーっとだ
ずーっと
この歌詞が頭から離れなくて
後ろ髪ひかれながら
運転してきた
泣き出してしまいそう
痛いほど好きだから
どこへも行かないで
息を止めてそばにいて
身体からこの心
取り出してくれるなら
あなたに見せたいの
この胸の想いを
教えて悲しくなる
その理由
あなたに触れていても
信じること
それだけだから
海よりも まだ深く
空よりも まだ青く
あなたを これ以上 愛するなんて
わたしには出来ない
貴章
頑張れ
貴章
頑張れ
貴章