帰りのHRも終わり、シンが迎えの車へと向かうのにギョン達も付き合う。


玄関先に陣取る相変わらずのギャラリーの中に、ヒスンとスニョンの姿が見えた。その後ろにチェギョンとガンヒョンがいる。無理矢理連れて来られたのだろう。
その姿を見つけたシンがふと微笑むと、たちまち悲鳴が轟いた。

「「「「「キャーー、殿下ーー、素敵ーー」」」」」

あまりのシンの人気にチェギョンは少し気後れしたが、せっかくここまで見送りに来たのだからと、胸の前で小さく手を降る。

嬉しくなった。
スマホを取り出すとチェギョンを見る。うなずいてくれたのを確認し、車に乗り込んだ。
すぐにメールをする。


〈チェギョンが見送りに来てるなんて、驚いたよ。〉

〈ヒスンとスニョンに、無理矢理ねσ(^_^;)〉

〈ああ、興味ないんだもんな(笑)〉

〈今はあるよ(笑)だって友達でしょ?でもすごい人気でビックリしたよ。シン君が皇太子だったって思い知った(o_o)〉

〈せめて高校内ぐらいはただのイ・シンでいたいんだけどな〉

〈私達の前では、ただのシン君だったよ。まあ普通の高校生と言うには、ちょっとオーラがあり過ぎるけどね(^ー^)ノ〉

〈ははは、そうか?〉

〈【宮】では皇太子のお仕事、頑張ってね。電話がかかってくるの、できるだけ起きて待ってるからp(^_^)q〉



もう自分の気持ちを無視することができない。誤魔化せない。
何度も何度もメールを読み返す。


平日は対外的な公務はあまりないが、皇帝陛下の体調が思わしくなく、簡単な執務や宮中祭祀の肩代わりをすることも多い。皇太子としても帝王学の講義、武術の鍛錬、乗馬、弓、フェンシング、ダンスなど、毎日予定がぎっしりで息をつく暇もない。
私室に入るまでは常に人の目があり、肩の力を抜くこともできない。
どんなに頑張ろうと当たり前ととられ、褒められることもない。
元々、少し神経質なたちでもあり、眠りも浅く、いつも疲れがとれないので、定期的に風邪を引く。
病気になっても家族の看病など望めず、一人静かに治るのを待つ。

だから、皇太子など辞めたかったし、この【宮】から自由になることばかりを考えていた。
一足先に留学をして、この【宮】から飛び立った姉上が羨ましかった。

でも、チェギョンは、ただのシン君だと、俺のやっていることは皇太子業で、宮中では皇太子のお仕事を頑張ってと言ってくれた。
それは皇太子である前に、イ・シンでいていいのだと言われた気がした。

チェギョンを思うと温かい。好きなんだと思う。

メールではなく、声の聞ける電話が楽しみで、時間が遅くなり、チェギョンが寝てしまうことが怖かった。
いつも以上に張り切り、大急ぎで全ての予定を終わらせた。こんなことは初めてだ。

私室に入る。

寸前まで、早く早くと気が急いていたのに、なぜかスマホを持つ手が止まる。

一つ深呼吸をして、ゆっくりチェギョンの番号にかけた。