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世間の喧騒をよそに、芸術高校では穏やかな日々だった。

あの件以降、御曹司達はすっかり大人しくなり、真面目に授業も受けている。まわりとも少しずつ打ち解けて、話しをするようになっていた。自分が変わるとまわりも変わる。最初は敵意しか感じなかったが、今ではクラスの一員として、見栄を張ったり、虚勢を張ったりせずにいられる、普通の友達関係を学んでいるようだった。

ヒョリンはどうしてもまわりと溶け込めず、いつも1人でいた。シンはともかく、イン達とも付き合いがなくなった。
バレエの技術力の高さは流石のものがあるのだが、やはりB組では教えてもらえる内容に差がある。それでも、もうバレエ教室にも通えない。このままではA組の子たちに負けそうで、気持ちばかりが急いて焦っていた。
B棟には、授業以外で立ち入るとこができず、シンやイン達とも全く接点が持てずにいた。
ただ、毎日チェギョンのためにA棟に来るシンは見かけるが、【宮】の翊衞士により、近づくことさえできなかった。本当ならあの位置に私がいたはずなのにと思うことは、どうしてもやめられなかった。
ずっとずっと、なんでこうなったのか、どこで間違ったのか、どうすればよかったのか、そればかりを考えていた。


シンとチェギョンは、普通の高校生活、友達関係、そして恋人同士を楽しんでいた。

あれ以降、シンは当たり前のように、朝は美術科まで送って行き、帰りも教室まで迎えに来る。
教室でもクラスメイト達とよく話すようになり、笑顔も増え、段々と素のイ・シンとして過ごせるようになっていた。
あの時クラス替えをした3人の、特にハリムの明るさのおかげで、クラスに溶け込め、映像学科A組の結束力も強まったようだ。

お昼ご飯は、チェギョンとチェギョンの友達も交え色んな所で食べているようで、生徒の間では今日はどこだろうと話題になることも多かった。運が良ければ、笑い転げている殿下を見られるという噂も、まことしやかに囁かれていた。

一緒にいる時のシンとチェギョンはいつも笑顔で、結構なイチャイチャっぷりなのだが、とても微笑ましくまわりまで幸せを感じる。

シンとチェギョンの仲のよさにも全校生徒が慣れてきた頃、皇太后さまの誕生を祝う会が催されることになる。



いよいよ、皇太后様の誕生を祝う会が開かれる。
チェギョンの家族はもとより、親戚であることを公表したヒョン一家も正式に招待されていた。
皇太子夫妻の、王族への正式なお披露目も兼ねているので、各王族は家族での出席がほとんどだった。
政財界の主だったものも招待されており、ここ最近では1番大規模なパーティとなる。

ジノンは、今回の招待で、父親のジファンのことを心配していた。

今まで、姫のことを秘密にしていたのは、もちろん姫を守るためと、可愛すぎて誰にも見せたくなかったというのもあったのだが、それ以上に姫といる時のジファンを、公の場で見せられなかったのだ。
一応、大会社の総帥であるから、姫といる時のデレデレを見られると会社運営にマイナスになりかねない。そのリスクを抑えるためでもあったのだ。
もし誰かが姫を少しでも攻撃したら、その時の暴走も怖い。
義母であるスンミがいるとはいえ、どんな状況になっても止められるように、ジノンは気を引き締めていた。