単に自分が食べたかったのだが、夫のためにという大義名分で、お菓子屋さんへチョコレートを買いに行った。
お店に入り、小さなチョコレート菓子を選んでレジへ向かうと、レジ横のケースの中に美味しそうなチョコレートケーキが置いてあった。
そのインパクトあるビジュアルから目が離せなくなってしまった。
食べてみたいけど、一人で食べるには大きすぎる。
って言うか、量的には一人で食べられるとしても、一人で食べてはいけないもののような気がする。
このケーキは幸せな人達が分かち合いながら食べるもの。
私のような者が手を出してはいけない気がした。
そんなことを思いながら横目で見ていたら、店員さんが、
「バレンタイン限定ですよ!とてもおいしいですよ!」
と勧めてきた。
私はためらう気持ちはあるものの、食い意地に押され、そして結局、買ってしまった。
さも夫や家族のために買うという、幸せな主婦を装って。
今は自分のためにバレンタインのチョコを買う人も多いから、そんなに気にすることはないのだろうけど。
昨今のソロ活の浸透もあり、一人でできることは増えてはいるが、それでも一人では入りづらいお店とか、一人で食べることが憚られるものもある。
私も夫がいなくなり、だいぶ色々なことを一人でできるようになったが、それでもここは一人では行きづらいなという場所はある。
本当はここでこれを食べたいと思っているものがあるが、一人で行くのは気が引ける。
夫がいた時は、一緒に色々な場所に色々なものを食べに行ったのに。
夫と一緒でないと行けない場所でしか食べられないものは、もう一生食べられないと諦めていた。
しかし最近、物理的に行くことが難しいのではなく単に一人で行くのが気が引けるというだけなら、一人でも食べに行った方がいいと思い始めた。
歳を重ねるにつれ、だんだん若い頃のようにたくさん食べられなくなっているのを感じている。
この先、食べたいものが食べられなくなるかもしれない。
そう思うと、後悔しないように食べたいものを食べられるうちに食べようと思う。
そして今も、ある場所へ食べたいものを食べに行く計画を立てている。
こんなに贅沢してていいのだろうか?
でも、一人で頑張ってるんだから、いいよね。
そして今日も色々疲れてしまったので、バレンタインケーキの残りを食べた。
夫のためと言いながら、結局自分のためのご褒美バレンタインになってしまった。
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つい買ってしまったバレンタインデー限定ケーキ。
可愛らしいフォルムですが味も美味しかったです。
