ほとんど使っていない家の固定電話。



たまに鳴ることもあるが、たいていはセールスらしく、留守電に切り替わるとメッセージも残さず切れる。



本当に用事のある人はメッセージを残すか携帯に電話してくる。



なので、基本、家の電話はダイレクトには出ない。



けれど、たまに固定電話の番号しか知らない昔の知人から連絡が来ることもあるので、全て無視することもできず悩ましいのだが。



今日、珍しく家の電話が鳴った。



一回目はいつも通り出なかった。



しかし、しばらくしてもう一回コールがあったので、もしかしたら知り合いかもと思い、受話器をとった。



そうしたら、男性が早口でまくしたててきた。



「私、〇〇さん(夫の名前)の弟さんの△△さんと高校で同級だった□□と申します。


実は同窓会をやることになり、△△さん(義弟)と連絡をとろうとしたのですが、連絡先がわからず、お兄様の〇〇さん(夫)にご連絡した次第です。〇〇さんは今いらっしゃいますか?」



私は一瞬、どう答えたらいいのかわからなくなってしまい、固まってしまった。



でも、他に答えようがないので、


「夫は亡くなりました。」


と言った。



相手は、一瞬言葉がつまって、


「それは、、、。知らずにお電話して申し訳ありませんでした。」


と言った。



私は、もう電話を切りたかった。



夫の同級生ならともかく、夫の弟の同級生で、その同窓会の話なんか、関係ないし。



しかし、その男性は、まくしたててきた。



「△△さん(義弟)は、高校時代、目立っていて有名だったし、皆、会いたがっているんです。なので連絡先を教えてもらえませんか?」



私はモヤモヤした。



電話だけで相手が本当の同級生かもわからないのに、簡単に連絡先を教えることなんてできないのに、平気で教えろと言ってくるのもどうかと思った。



しかし、それより、同窓会やりたいから連絡先教えろ(しかも夫じゃなくて義弟の同窓会)と言って、何の関係もない私が何でそのために時間と手間をとられないといけないのか?ということにモヤモヤしてしまった。



そして、あなた達の同級生は健在だと当たり前のように思って同窓会やりたいとはしゃいでいるけど、私の夫はもういないのだと思うと、悔しくて空しくて情けなくなってしまった。



何でこんな仕打ちを受けなきゃいけないんだろう?



私はその男性に、逆にあなたの電話番号を教えてくれたら義弟から連絡させると言ったが、その男性は海外にいるので国際電話になってしまうので難しいのでは?と言った。



私は言い返した。



「あなたのことを疑っている訳ではないのですが、電話だけで本当にあなたが義弟の同級生か判断できません。電話が無理ならメールアドレスを教えていただけますか?義弟からメールさせますので。」



メールアドレスを聞き取った後も、その男性はペラペラしゃべっていた。



「△△くん(義弟)は、高校の時、バンドもやっててカッコよくて人気者で、皆、本当に会いたがっているんですよ。ちなみに自分は空手をやってました。そう言っていただければ△△くんも僕が本人だとわかってくれるはずですよ。」



私だって疑ってる訳ではない。



話し方といい、広島の独特の訛りといい、義弟の同級生に間違いはないのだろう。



でも、そんなことより、夫のことはろくに知らなくて、ただ義弟と連絡をとりたくて電話してきて、しかも義弟の話ばかり聞かされて、それにモヤモヤしてしまった。



せめて夫の同級生とか、同級生でなくても夫を知っている人だったら、夫のことを話して思い出を共有することもできたのに。



側からみたら、私はかなり感じ悪い対応してただろうなと思う。



嫌な女だと思われただろうな。



けど、義弟の同級生なんか関係ないし。



そもそも家の電話に出なければよかったのかな。