「はたらく一家」 | YURIKAの囁き

「はたらく一家」

 ’39年、日本映画、65分


 プロレタリア文学は壊滅し、左翼作家たちの一部は転向しながらも辛うじて労働者の生活の貧しさを描くことによって抵抗していた、そういう時代背景の中で書かれたと言う徳永直の小説が原作。

 成瀬巳喜男監督は、当時としてはギリギリ、貧しい人々の生活をよりリアルに描くことによって、抵抗の姿勢を示したのでしょうか。
 物語は、年老いた印刷工の父は、息子たちが進学を志して上京しようとする意志を、家の家計が苦しいことを理由に断念してもらいたい。しかし、息子たちの将来性に富んだ人生を、自分の失敗した人生と照らし合わせてみると、なんとも遣る瀬無く、貧しさの中で、子供たちの未来に夢を託すことのできない父親像が哀れ。
 成瀬監督お得意の家族劇だけれど、何作か観たなかでは異色な父親と息子という設定。父親役の徳川夢声が情けない父親をホントに情けなく演じていて、逆に面白い。しかし、当時の高校生とかって、こんなに老けてていいのかってぐらいの老け顔なんですね。ただ役者だから、というのではなくて、未来に向けての惜しみない努力と、生活的な苦しさ、それと知的水準などが加味されて、こういう老け顔になるのかしらと思ってしまった(笑)コンシューマ化されてない作品だけに貴重。