「ヴァージン・スーサイズ」 | YURIKAの囁き

「ヴァージン・スーサイズ」

 ’99年 アメリカ映画 98分

 5人姉妹の末っ子セシリアが、聖母マリアの写真を抱きながら剃刀で自殺未遂をした。1970年代のミシガン州のとある住宅街。ハイスクールに通うリスボン家の5人姉妹。セシリアの自殺未遂から数日後、今度はセシリアは自宅の窓から投身自殺を図り、彼女は帰らぬ人となった。この事件を機に、さらに4女ラックスも事件を起こし、ついに彼女たちは、親により軟禁状態を余儀なくされる。そして、彼女たちを家から救おうとする少年たち。

 原作は、1993年に出されたジェフリー・ジェニデスの小説『ヘビトンボの季節に自殺した5人姉妹』。監督は、ソフィア・コッポラ。これが長編第一作です。物語が70年代を描いているため、当時、世間で流行となった音楽をふんだんに使っていて、当時の世相などをよく知っている人には懐かしさもあっていいと思います。映画的なセンスは、やはり父親譲りですね。表現方法などに優れているし、少女の内面などの心の襞をうまく表現されていて、女性的な演出をしています。一見、少女趣味になりがちな設定ではあるけれど、そこのところを幻想的にもアンニョイさを残しつつシビアに描いていると思う。少年たちから見た少女の持つ神秘さとか、大人たちから見た少女たちの曖昧さとか、そういった、少女の持つ曖昧な部分と神秘性を、監督自らの実体験的な表現によって、ノスタルジックに描いた不思議な映画ですね。
 自殺という重く暗い雰囲気なのに、そこには、どことなく重くも暗くもない、微妙なニュアンスがあって、そこに、この映画の魅力もあるんだと思う。観た人たちの中には、少女たちの短絡的な生き方などに批判的な人もいるけれど、この映画の中で、狂気に陥っているのは少女たちではない。大人たちが理解し得ない少女たちを家に閉じ込め、母親は思い出を燃やし、父親は仕事を無くし、そして少女たちを精神的に見捨てる。この大人達こそ狂気そのものなのだと映画は訴えています。
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ソフィア・コッポラの映画初監督作『Lick The Star』。
4人の女の子が完全犯罪を計画するというお話。98年に製作されたこの作品は、後の『ヴァージン・スーサイズ』の原型ともいうべき作品。短編らしいですが、近く、ショートフィルム・フェスティヴァル等で公開予定らしい。
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 ピクニックatハンギングロック ’75年 116分
『ヴァージン・スーサイズ』が好きな人には、こちらもお勧め。
ビクトリア王朝時代の名残ある1900年。寄宿学校の少女たちが、ピクニックに出かけ、その内の数人の少女が忽然と行方を絶つ。当時のフリルの多いファッションとか、白いレースとか、少女たちの不思議さや神秘さが、映画全体を通してよく表現されてて、好きな映画の一本です。