「50回目のファーストキス」 | YURIKAの囁き

「50回目のファーストキス」

 

■2004年、アメリカ映画、99分
■監督:ピーター・シーガル
■製作:ジャック・ジャラプト、スティーブ・ゴリン、ナンシー・ジュヴォネン
■脚本:ジャージ・ウィング
■撮影:ジャック・N・グリーン
■出演:アダム・サンドラー、ドリュー・バリモア
     ロブ・シュナイダー、ダン・エイクロイド
【ストーリー】
ハワイ、オアフ島のカフェで、朝食を摂るためにやってきた水族館専門獣医のヘンリーは、一人で食事をしている可愛いブロンド美女に人目惚れしてしまう。彼女の名前はルーシー。それまで、数々の浮名を流してきたヘンリー。ここでもルーシーを上手くナンパできた。しかし、翌朝、再びルーシーとレストランで対面するが、彼女はすっかりヘンリーのことを忘れていた。一年前の自動車事故によって小脳を傷つけ、その後遺症で一日だけしか記憶を残せないという障害を負ったルーシー。つまり、毎朝、ヘンリーとは初対面というわけだ。レストランのオーナーから、そのことを聞かされたヘンリーは、それでもルーシーを忘れることができず、毎日初対面でもいいから、毎日ルーシーと恋をすることを決心する。
【解説】
映画界は、どうも記憶喪失がブームなんでしょうか(笑)というわけで、ヴィスコンティみたいな疲れる芸術作品を観たあとの、このかる~いノリが癖になりそうです(笑)主人公が惚れるルーシーの患っている病は、ゴールド・フィールド症候群、通称GFSと言うそうですが、この障害は、実際には存在しない障害で、フィクションということになってます。だけど、記憶が薄れていくという障害は事実あるそうで、若年性健忘症などがそうですが、今公開中の韓国映画『わたしの頭の中の消しゴム』の主人公がそういう病気ですね。
で、映画のほうですが、ヘンリーが彼女の障害を自分自信(ルーシー)が納得いくように一本のビデオテープに、事故から現在までの過程を編集して、毎朝起きたらテープを見るようにと枕元に置く。こういう涙ぐましい努力に泣けてきます。つまり、朝一発目から、彼女は事の事実と向き合わされる。そして、ひとしきり落ち込み、泣き疲れてから、その日をスタートさせるという毎日を送ることになるわけです。
以前、テレビの報道番組で、若年性健忘症の青年のドキュメントがあって見たのですが、次第に自分自信の名前も、親の名前も忘れていくんですよね。この辛さは筆舌に尽くし難いものがあって、しかし、不思議なことに、毎日行っていた習慣的なこと、毎朝新聞を広げて読むという習慣だけは、障害が進行しても続けているということ。字そのものも忘れかけているので、実際は読んではいないのだけれど、新聞を広げて読む行為が、息子さんを見守る母親の心を思うと、痛々しく感じました。
この映画も、つい出演者たちを見ると、ラブストーリーとして見てしまいがちだけど、こういった障害を持って生きていく人たちと、それを支えていく人たちの深く結びついた絆を、第三者的立場ではあるけれど、理解していくことが大切なのではないかと痛切に思ったわけです。