午前5時、朝市会場は既に賑わいを見せていた。車を降りると海からの冷たい風がツンと鼻を刺して、さぁ!ゆっくりブラブラしようかな?
車の後部座席からキャップを取りだし、起きたばかりのボサボサ頭を隠すと、車をバタンッと勢いよく閉めた。
「ん?」
なんか、いつもと違う感覚が...
車の中の光景に、衝撃が走る。手が震え、思わず膝から崩れ落ちそうになる。
オーマイガーッ!!!

インキーしてしまった。
※これは再現の写真です。
こんな大事件でそんな余裕はありませんよ。
「もしかして...」と車を一周して、全てのドアを開けようとしても、やっぱり開かない。
車で15分の距離に住んでいる、姉貴にLINEをしたけど既読にならず。
(朝早くに電話すれば、チビたちが起きちゃうからね)
携帯でJAFのサイトを見てみると、非会員の早朝料金は1万円オーバー。
せめて、8時以降までは待った方が...
携帯片手に呆然としている。LINEはまだ既読にならない。
こんな時って、他の人はどうするんだろ?
すかさず解錠のために、業者に電話するんだろうなぁ。
けど、給料日まで貧乏生活の自分には一万円はキツい...そんなことを考えていると、弱り目に祟り目。
ポツリポツリ
雨かよ⤵泣きそうになる。
弱気になって窓から車の中を眺めていると、車のキーの形状に気づく。
もしかして...
雨がポツリポツリから、ポツポツと変わり始め、一か八かの行動に出る。
市場の会場は埠頭にあり、少し歩けば漁船の船着き場や倉庫が並んでいる。
小さい頃、このへんでよく遊んでいたので、土地勘がある。
このへんでは、針金が転がっていてもおかしくない環境なのだ。とにかく倉庫の方へ向かって歩き出す。
朝市に向かう人たちとすれ違いながら、挙動不審な動きで針金を探していると、1分も経たないうちに、やっぱり落ちてるもんなのよ。
ちょうどよい太さで、先端も理想的な形状で丸められていた。
朝市に着くまでに、一服したことが幸いして窓は5㎝くらい開いていので、そこから針金をソロソロと伸ばして行く。
1回目は上手くカギまで届かない。
針金を取り出して、形を整えると再度カギの奪還に挑む!
よっしゃ!
想像通りの展開。
カギの金具に針金の先端が入ると、そっと引き抜く。
ここでカギを落としてしまったら、財布から大事な1万円が飛んで行く。
頼む‼神様ーっ!

ぶはっ!
ゲットだぜ!
※これはリアルタイムで撮った
こん時は余裕があった。
興奮と緊張の中、雨を避けるために車に乗り込み、震える手でタバコを吸う。
また泣きそうになる。天才すぎて怖い。
今日は安い野菜と魚を買おうと思ったけど、1万円の諭吉様を救うことが出来たもんだから、ご褒美に朝市名物の「しおてば」を腹一杯食べよう!

傘を取り出して、気分も改めて朝市の会場へ向かって歩いていると、雨はザーザーと音をたてて降り始めた。
まるで、この天才Yurihey様を拍手で讃えるような音が、傘の中で響いていた。
どう?
つまんない自慢話。
