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「尊敬」の気持ちは変わらない。
理性の下に在り続ける。
「本能」に抗えなくなったらどうしたら良いのだろう。
私の理性は所詮そんな程度だ。
護られたいとか甘えたいとかそういう類の願望は一切無いのに、最近あの人を抱きしめたくなってしまう。
妄想上では既に抱きしめた。3回くらい。
迫る健康診断のことを気にしていること、糖尿の数値が年々よろしくないこと、勿論普通に心配だけれど、最近の彼のランチの内容で体質改善の努力を周りは皆感じていた。
私もそう。
私自身は筋肉質な身体に憧れて、ほんの少しだけ以前よりたんぱく質を積極的に摂取している。
そして阿呆な想像をしてしまう。
私の体重の2倍はある彼、ぎゅーっとしたらどんな感触なのか、とか。
健気な努力を応援しつつ、舐めたら甘いのだろうか、とか。
筋肉を自分に身につけて柔らかいあの人を抱きしめてみたいとか。
自分の煩悩を押し込めて彼とは仕事の話をする。
彼が隣の席の女性と悪態をつきあって、よく笑っているのを見かける。
仲良さそう。
でも悔しくは無い。
彼を好きとか手に入れたいとかそんな気持ちならまだ良かった。
そんな欲より低俗な私の煩悩。
今日もしらっと普通を装って「今聞いてもいい?」と資料を手に彼の横に立つ。
彼はPCに向き合って死ぬほど忙しそうだけれど「いいっすよ」といつも言ってくれる。
PCから目を離さない彼は失礼というか、まあ私からの質問が面倒なんだろうなと以前から思っていた。
けれど今私が持つ煩悩の下ではむしろそれは好都合だった。意識しなくてすむので大変たすかる、隠すのに精一杯なもので。
なので突然「ゆりさんが」などと急にこちらを向くと困る。
「そこまで入力してくれてるんだったら、後は俺やりますよ」とかこっち見て言われると本当に困る。
「珍しいっすね、そういうの俺よりゆりさん得意なのに」
タイプじゃないのに動揺した。
欲を抑え込むのって難儀な作業なんだなとあらためて思う。
だってまたちらつく。
この人甘いのかなって。


















