実像も虚像も、実は どちらも その人物を現すものなのでは…。
本作は、FBIを作り、その長官として君臨した
ジョン・エドガー・フーヴァーの生涯を描いた伝記映画です。
クリント・イーストウッド監督は、
複雑きわまる構成で、フーヴァー長官の全体像に迫っています。
観る側には、相反する視点からの映像を提示されます。
ひとつは、
フーヴァーが、回想録を残すために語る「虚像」の部分。
ギャングとカッコよく闘い、捕まえる英雄で、
まさに、”米国の英雄” を体現しているもの。
もうひとつは、マザコンで同性愛者の「実像」。
女装趣味もあり、このシーンでは、
ヒッチコック監督の「サイコ」 を彷彿とさせます。
が、フーヴァーは、自身で、その実像を認めないのです。
認めたくないから、
他人の行為を暴くことに執着するのですね。
(C)2011WARNERBROS.ENTERTAINMENTINC.
虚像と実像が、奇妙にも互いに支えながら、
それが、両論となり、FBI、そして華やかな米国を
作りあげていく様子が、実にスリリングで興味深かったけれど、
この時間内で、あまりにも多くを語りすぎているかなと。。
年老いた、フーヴァーとトルソンが、食事する場面は、
唯一、情感を覚えるシーンで微笑ましい。
フーヴァー役のディカプリオは、特殊メークを使用しながら、
22歳から77歳までを、見事に演じきったと思います。