舞台は、南アルプスの麓にある実在の大鹿村。
騒動といっても、特筆すべきことなのではなく、
村人すべてが ”知り合い” みたいところにとっては
三面記事的な事件が勃発するのです。
鹿料理店を営む風祭善(原田芳雄)のもとへ、18年前に駆け落ちした
妻の貴子(大楠道代)と幼なじみの治(岸部一徳)が突然帰ってきたことから
物語は始まります…。
この駆け落ちしたふたり、ひっそり帰ってきて謝るわけでもなく、
何もなかったように振る舞い かなり図々しいのですが、
なぜか憎めないキャラで 面白すぎます。
実は、ある理由から戻ってきたのですが。。
(C)2011「大鹿村騒動記」製作委員会
村を二分するリニア新幹線建設、アルバイト青年の性同一性障害など
のどかな村にとっては、問題山積みなのですが どこか深刻にならない。
なぜなら、江戸時代から続く村歌舞伎の公演にすべてを賭けているから。
ごくごく普通に生きているからこそ起こりえる
滑稽さ と もの哀しさ。
セリフに魂が宿っているかのごとく
活き活きとしていて楽しさに満ちあふれている喜劇。
いろいろとあるけれど、一致団結して公演を成功させようとする
村民の ひたむきさ、たくましさ、そして 心意気 に感動。
原田芳雄さんの横顔に哀愁が漂い、じ~んといたしました。
心からご冥福をお祈りいたします。
本音のレビュー
お酒を酌み交わしながら、妻と駆け落ちした治(岸部一徳)に
「俺 治ちゃんが好きだったんだよ。」という善(原田芳雄)。
いくつになっても ”ちゃん” づけして 口ケンカはするけれど
お互いを心から好きなんだろうな、と思う間柄。
こういう 大きな心を持っている男の人って惹かれますね~。
だから 妻の貴子は忘れられなかったのです。
テンポのいい筋運びと軽妙なセリフのやり取り。
そして 自由にのびのびと演技している 出演者たちの役者っぷりのよさ。
丁寧に作られていて 映画的興趣に満ちた作品ということが
観客にまで伝わってくるところが 素晴らしいです。
ラストの歌舞伎シーンは とにかく圧巻!