夫に裏切られ、子どもを連れ去られた女性を描くほうが
同性の共感をたやすく得られやすいのでしょうね。
が、本作品の主人公である希和子は、妻のいる男性を愛し妊娠したが
中絶せざるを得なくなり、その悲しさ、辛さから男性の家に押し入り、
生まれたばかりの赤ちゃんを誘拐してしまうのです。
そして、奇跡が起こるシーン。
泣いていた赤ちゃんが 希和子を見て 急にニコニコ笑う。
彼女の顔が柔和になり 時が一瞬 止まる。。
この天使のような笑顔が 彼女に母親の気持ちを持たせたのでしょう。
どしゃぶりの中、赤ちゃんを抱いて 走って 逃げる・・・。
各地を転々として、最後に小豆島へたどり着く。
希和子(永作博美)は、一日でも長く、本当の娘として愛している薫と一緒にいたい、と
思う反面、どこかで捕まえてほしいと願っていたのかもしれない。
(C)2011「八日目の蝉」製作委員会
希和子は、”薫”の心とからだを いつも抱きしめているのです。
「一緒にきれいなものを たくさん見ようね。」と
限りない愛情を降り注ぎながら。。
(左)誘拐事件を記事にしたいというルポライターの千草(小池栄子)
薫という名前は、自分を誘拐した母である希和子がつけた名前。
恵理菜(井上真央)は、辛い過去を背負っているにも関わらず
まっすぐに生きている女性。
でも、偽の母親への愛情が忘れられず、
本当の母親に親しむことができないというやりきれない哀しさ。
ラストシーンで、
「愛してはいけないのに、憎まないといけないのに、、できない…。」と
恵理菜が希和子への愛を吐露するところは、、、
涙がぼろぼろと流れてきて泣けました。
小豆島のキラキラ光る海の映像に
中島美嘉さんの「Dear」が流れますと、
より哀愁が漂い、切ない気持ちになります。
本音のレビュー
人って、こんなにも愛することができる、
また、これだけ愛されると忘れようにも忘れられない…。
永作さんの薫を見る目が、愛おしくてたまらないという
母親の表情で渾身の演技でした。
「今日も1日無事でありますように。
明日も薫と一緒にいることができますように…」
ただただそれだけを願っていた女性の痛ましい哀しみと
それを生き抜く強さが、よく描かれています。
ここに出ている女性たちが、それぞれ幸せになってくれることを
願わずにはいられません。。