舞台は江戸末期、
武士が武士として生き抜くことが難しい太平の世。
現代同様、死が隣り合わせではないだけ、
ご乱心だけでは済まされない残虐さや快楽を求める
暴君が現れるのだろうか。
どことなく破滅主義のようにも思えましたが・・・。
将軍の弟であり明石藩主、
松平斉韶(なりつぐ)役の稲垣吾郎さん、
役に入り込んでいて、演技とはいえ、その悪行の数々には
憎らしく感じてしまうほどでした。
吾郎ちゃんファンは、複雑な思いだったでしょうね。
切腹シーンから始まるこの作品、
(ずっと観続けられるだろうか。)と不安に思いましたが、
1963年の傑作時代劇をリメークしただけあり、
そのストーリーの奥深さ、人間群像劇としての面白さに
いつの間にか惹きこまれていました。
こんな暴君に日本の政を任せてはいけない、と
老中(平幹二郎)は、島田(役所広司)に斉韶暗殺を指示。
島田は、自身を含む13人だけで刺客部隊を作って
参勤交代から帰国する斉韶一行の襲撃を狙うのですが、
(200騎300人超)
短期間で作るその仕掛けには、度肝を抜かれます。
島田と斉韶腹心の亀頭(市村正親)との思わず汗を握る頭脳戦、
終盤50分にわたる壮絶な戦い。
久しぶりに、紛れもない男と男の真剣勝負を見た気が
いたしました。
すさまじく凄惨である一方、
一生懸命だからこそ起きる笑いもあり、人間の滑稽さ、悲哀、欲・・・、
人間の煩悩すべてが、死を覚悟する前に浮かび上がってくるのです。
(C) 2010「十三人の刺客」製作委員会
主演の役所さんを始め、妙に暴君役が合っている吾郎ちゃん、
野人役の伊勢谷友介さん、抑えた演技をしている山田孝之さん、
松方弘樹さん、松本幸四郎さん、キャスト全てがぴたっと合っています。
志の高い気概のある武士たちが、
今の日本を見たら、どう思うだろうか、と
ふと感じました・・・。
自分たちの利のためでなく
後世のため、大願成就して美しく散っていった男たちの物語。