ある中学校のホームルームで、
愛娘を校内で亡くした(殺された)女教師の『告白』から
始まるという異色なストーリー。
女教師役である松たか子さんの感情を押し殺した、
淡々とした語り口が逆にこわいくらい。
時折り見せる抑えられない怒りと悲しい思いが
今にも爆発しそうで、その場に漂う緊張感が
観ている側にも伝わってくるほど。
ここでは、少年法、エイズ、教育、殺人、いじめ、報復など
さまざまな問題をはらみながら、複雑に絡ませていく・・・。
「親が悪い」とか「社会が悪い」という短絡的なひとことでは
済ませられないくらい考えさせられます。
根っこの部分は、
「愛されたい」、「もっと注目を浴びたい」ということだったのに・・・。
わけ
理由もなくひとを傷つけたり、残酷なことをしているのに、
それを軽~く冗談でうそぶきながら、
煙に巻くような大人顔負けの腹黒い少年たち。
ラストシーンで松さんが言い放つひとことは、
まさに、現代の世相を表現しているのではないでしょうか。
昔、観ました松本清張原作の『疑惑』のラストシーンで、
球磨子(くまこ)役の桃井かおりさんが、弁護士役の岩下志麻さんに
言い放った捨てセリフが脳裏に浮かびました。
表面上は、真面目でお手本になるようなセリフを言いながら
心の中で舌を出すといった少年、少女たちを見ていたら
何だかやりきれなく・・・。
弱いものがもっと弱いものをいじめ、真実と虚偽
正義と悪が交錯する、ある意味人間の真の姿を
映し出しているのではないだろうか。
ボタンをひとつ掛け違えるだけで、
まったく違う人生になってしまうことへの警鐘と
私は感じられずにはいられなかった。
犯人Aクンが、自分で発明した『時間の戻る時計』を
ぼんやりと見つめていたシーンがもの哀しい。
原作は、本屋大賞受賞作の湊かなえ氏。