手に負えない手術は急を要す場合でも受けず、
患者をたらい回しにする。
(失敗して”病院の傷”になると困るという由から)
大学病院から派遣された、メンツや地位ばかりを重要視する
高慢な医師らは医療ミスを隠蔽し、
挙句、「寿命」というたったひとことで片付けてしまおうとする
腐敗しきった、とある漁師町の市民病院。
「今日もまた後味の悪いオペになってしまった・・・。」という
”ぐち”で始まる日記を記している看護師の浪子(夏川結衣)。
浪子の部屋は、イヤでイヤでたまらないその心を現すように、
乱雑でした。
(C)2010「孤高のメス」製作委員会
そこに現れたひとりの医師、当麻(堤真一)。
当麻医師は、米国で高度な先進技術を身につけた外科医で
あるのにその秀でた能力を全く鼻にかけず、
ひたすら”命を救う”ことだけに強い信念を持っているのです。
この姿に浪子は尊敬の念だけではなく、恋愛感情を抱いて
いくのですが、彼女だけではなく周囲のひとたちの心や
仕事に対する姿勢までをも変えていきます。
(堤さん、キリッと爽やかで魅了されますよ)
「今まで、こんなにてらいのない美しいオぺを見たことがなかった・・・。」と
のちの日記に当麻のことを綴った浪子の部屋は、
日々充足して前向きになった心を映し出すように
キレイに片付けられていました。
観ている側も固唾を飲むという緊迫さ。
このオペ場面も、すべてキャスト自身が練習に練習を重ねられた
とのこと。
堤さん、夏川さん、余さんの演技が胸にぐっときて素晴らしい。
当麻医師が手術中に好んで流す、都はるみさんの演歌が
米国帰りの彼とギャップがあり笑いを誘います。
後半~終盤にかけて、法律では認められていない
脳死肝移植についての当麻の倫理観、決断が問われる一方、
彼の才能を妬む外科医長(生瀬勝久)は圧力をかけます。
(どこの世界にもこのような人っていますよね・・・)
「医師になるよりも、医師であり続けることの方がむずかしい。」
名誉欲からではなく確固たる信念のもと、
タブーに真正面から向き合い、医師生命をかけた当麻。
命を真っ先に救うという、医療の本来あるべき姿を描いており、
原作は、大鐘稔彦氏のベストセラー小説。
一部、病院や医師の悪い一面を描いていますが、
でもやはり、常に生死と向き合って医療の現場に従事されている
方々に対しては頭の下がる思いでいっぱいです。
本音を言えば、、、
もしも手術を要する病気になったとしたら、
当麻のような人の命を重んじる、人間味のある医師に診てもらいたいと
思うのは、私だけではないでしょう。。
