主人公の倫子がいっぺんに失ったもの、
恋、家財道具一式(それもこつこつと揃えたこだわりのある
台所道具)、
そして、、、声・・・。
残されたものは、
大切な祖母の形見のぬか床。
このぬか床にしか寄るすべがなくなってしまった倫子ですが
どこか悲惨な感を受けないのです。
ところどころで描かれている回想の中で、
思い出とそれにまつわる料理の数々から
温かさを感じ取れるからでしょうか。
私自身、『ぬか床』をつける方とは、
ほとんどがいい友人になれるのです。
熟成した美味しい『ぬか床』をつくるには、くる日もくる日も
”かきまぜる”という単純作業をこなさなければなりません。
ひとを見る際(”教育する”という観点からも)、
単純作業でも工夫をして尚且つ腐ることなく続けられるひとを
私は重要視いたします。
まあ、話がそれてしまいましたね。
倫子は故郷に戻って、
メニューのない食堂を始めるのです。
それもお客様は1日1組だけ。
ここがまた心憎いですよね。
決して楽とはいえない生活の中から
こだわりのある台所道具をみたとき、
彼女は手間隙をかけたお料理を作るのだろうと
想像したとおりでした。
『食堂かたつむり』でのひととの出会いが
徐々に、そうかたつむりがのそりのそり進むように
あらゆることが変わっていくのです。
こちらも、柴崎コウさん主演で映画化。
2月6日(土)から全国公開となりま~す。
『食べると小さな奇跡が起こる』
本の中には美味しい食材、ほっぺたが確実に落ちる料理が
魅力的に表現されていて、
見ても作っても美味しい一冊です。
『食堂かたつむりの料理』という本が、別途出版されております。
全てを失っても、希望と手間のかかった料理があれば
元気を出せる、、、
心の奥底がじわ~っと温かくなる物語です。。