「この作品の映画化を見るまでは
決して死ぬことはできない」と山崎豊子氏に
言わしめていた『沈まぬ太陽』。
主演の渡辺謙さんは、この役を射止めるために
自らアプローチされたほど。
スクリーンからは、その渾身の思い、演技が
伝わってきましたね。
気概の感じられる社会派映画で、
個人的に大好きな部類です。
【あらすじ】
巨大企業、国民航空社員の恩地元(渡辺謙)は
組合委員長として職場改善に真摯に取り組んだ
結果、会社から懲罰人事ともいえる、納得のいかない
海外赴任辞令を受ける。
以来、流刑のごとく僻地を転々とさせられる。
やがて、帰国した彼は、ジャンボ機墜落事故の
遺族係りとなる・・・。
同僚で、組合副委員長だった行天四郎(三浦友和)は、
要領よくエリートコースを歩んでいくのですが、
自己の出世だけに目がくらみ、悪魔に魂を売っていく
ように・・・。
社会の暗黒面の怖さ、哀しい人間の性を
見事に体現していたと思います。
その対極に位置している恩地は、
自身の信念を貫くのですが、そのために
家族に犠牲を強いることになり、心揺らぐことも。
でも、どんなに辛い目に遭わされても、
最後まで、貫き通す不屈の精神を持ち続けるのです。
高度成長期の日本が頂点に昇りつめる時代と、
航空機事故との映像を交互に映し出しながら
『巨大企業』と『個(人)』のありかたに
これでもかというくらい、鋭く切り込んでいます。
約3時間20分(途中休憩10分)でしたが、
決して長いとは感じさせないほど、
入り込んで観ておりました。
渡辺謙さんの”豪速球”が
ストレートど真ん中な映画。
ラストでの美しいシーンが
この作品のメッセージなのでしょう。
魅せられましたね。。
企業戦士の物語であって
ひとの幸せとは?という永遠のテーマを問う
奥の深い考えさせられる映画です。