『事実は小説よりも希なり』
本作品は、世界大恐慌時代の前夜となる1928年3月10日、
ロサンゼルスで起きた事件で、アメリカ史の中に埋もれていた
大変ショッキングな実話です。
タイトルの『チェンジリング』(CHANGELING)とは、
「取り換えられた子供」の意味だそう。
背景には、「さらった子供の代わりに妖精が置いていく醜い子供」
という伝説があります。
【あらすじ】
ロサンゼルス郊外で暮らしているクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は
9歳の息子、ウォルターと暮らしているシングルマザー。
電話会社に勤めている彼女は、父親の顔を知らないウォルターに辛い思いをさせない
よう限りない愛情を注ぎ、父親と母親の二役をこなしながら、忙しくも充実した毎日を
送っていたのである。
ある日、急に出勤となってしまったクリスティンが帰宅してみると、ウォルターが
いなくなっていた。
そして、5ヵ月後。
クリスティンのもとに、ウォルターが見つかったという朗報が届く。
だが、目の前に現れたのは、最愛の息子ウォルターではなく、
全く見知らぬ少年だったのである。
ここから、彼女の苦悩と悲しみ、そして闘いの日々が始まる・・・。
監督、製作:クリント・イーストウッド
2008年 米映画
これは、権力をふりかざし腐敗しきった警察に、毅然と立ち向かった
わが子を思う母親、クリスティンの勇気ある映画です。
そして、2つの暴力(警察が利害、保身のために行う強制と連続殺人の暴力)と
クリスティンの正義が描かれています。
クリスティン役のアンジーは、いつものカッコイイ彼女を見事なまでに
押さえ、心の奥底から湧き出る悲しみを、顔の表情、目で表現していて、
その演技に感動しました。
下手をすればただの猟奇事件となりうる、この憤りを感じるほどのトゥルーストーリーを
イーストウッドは、丁寧に、静かに、そしてその「時代」を簡潔に描いています。
ラストシーンで、一縷の希望を見せながら
時代を感じさせる白黒画面の中、エレガントなアンジーの毅然と歩いていく後姿が
胸に残りました。。