普段、外に出ているせいか、長いお休みはゆっくりと家で読書三昧していることが、私の
ささやかな楽しみです。
以前から読みたかった本を、お茶やお菓子をいただきながら(これが好きなんですよね~)
読みふけっていました。
雑誌編集者から作家になられた光野 桃(みつの もも)さんの”人生のブランク”、つまり
停滞と喪失の5年間をどう乗り越えたか、という内容で、これがとても興味深く、すうっと
入ってきました。
彼女の本はファッション関係のものが多かったのですが、(処女作は『おしゃれの視線』)
イメージのひとり歩きが苦しくて、ファッション以外のものを書きたくても、いったんついて
しまった強烈なイメージを崩して違うものを書けるほど、世の中は甘くなかったと・・・。
そして、その頃の彼女は、今日より明日の方が一歩でもよくないと我慢できない、0.5ミリ
でも進歩していないと我慢できなかったと・・・。
そして、書いても書いても気に入らず、どんなに評価され本が売れても、自分はダメだと
思い込み、カラカラに枯渇していき、コンプレックスとの闘いだったそうです。
追い詰められ、仕事を辞めてご主人の転勤先(バーレーン)に行っても、ほっとできた
わけではなく、辞める前以上の鬱状態に陥ったそうです。
毎日100本くらいの電話がある中で生活していたのが、急に1本もかかってこない、
仕事も友人もない、笑わない生活の中、彼女が実感したことは、
『自分の軸がちゃんとしていないと、何事も楽しめない』ということ。
この生活は、お母様の介護で帰国した事で一変しました。
1年間の介護後、お母様を自宅で看取ったあと、彼女は、生まれて初めて自分を認める
ことができたといいます。
今まで、自分を愛せなかった事や、仕事のクオリティーを何より優先させる気持ちはなく
なり、自分が「楽しい」と感じることが一番だと思うようになった、そして、楽しく生きて、
感謝して、生まれてきてよかったって死にたいと思った、とのこと。
生きていれば、いろいろなことが起きてこそ、人生。
なるべく苦労はしたくないですが、もし、辛い局面に見舞われてしまったら、それをバネ
にしたり、栄養にして、そこから先を強く、優しく、美しく生きていきたいな・・・と心に響い
たエッセイなのでした。