知っているはずの言葉、人の名前が咄嗟に出てこない・・・・・。

ただの物忘れ、ど忘れだと思っていたら、原因不明の眩暈、頭痛に襲われ、念のため病院で検査を受けに行き、そこで若い医師から「若年性アルツハイマー病」と告知される。


荻原浩氏の同名ベストセラーを原作に、若年性アルツハイマーに侵された広告代理店営業部長の佐伯(渡辺謙)と、その全てを受け止めようとする妻(樋口可南子)との、喪失を乗り越えていく夫婦の情愛が描かれています。

監督は、「トリック」や「ケイゾク」といった作品でも名高い堤幸彦氏。


人生の円熟期を迎えた働き盛りの中年を襲う「若年性アルツハイマー」という重い題材、さらには、人を愛する、共に生きるという、人間の愛の本質に迫る重厚なテーマを掲げながらも、心和ませる上質なユーモアを織り込んで仕上げた堤監督の手腕が光る傑作です。


            


高齢者の認知症介護が社会的課題となっている現在、40、50代での発症も珍しい事ではなく、日本の臨床報告によりますと、最年少の発症事例は28歳という事実もあります。

国内の患者数は150万人以上とみられ、うち65歳未満の若年症の発症は約10%を占めます。


もし、身近な人がそうなったら・・・・・

もし、自分がそうなったら・・・・・

真実を告げられて、病気と対峙できるだろうか。


人間そのものの存在、人格を形成する『記憶』、その大切な装置が破壊されてしまったら、人は何によって相手と繋がり、意味を見出せるのでしょう。


人を愛すること、共に生きることという、人間の愛の本質について考えさせられます。

この妻は、悲しみを胸の奥底に閉じ込め、夫を見守りながら共に生きていこうとするのですが、そのさりげなく尽くす姿に胸を打たれました。

果たして、その立場になったら自分にできるだろうか・・・・・。


病と真摯に対峙して闘う佐伯と家族が、苦悶や葛藤を乗り越え、やがて現実を受け入れられた時、そこには何の打算も爽雑物もない人間賛歌が映し出されていきます。


ラストシーンが・・・、ここで描かれている紛れもない真実が胸に残りました。


本、映画でも感動しましたが、本日、テレビ朝日で放映され、改めて考えさせられたテーマです。