突然降りだした雨・・・。

その波紋は・・・。

☆★ まだ気が付かない・・・ ☆★

星「あー、まいった。」
おれは手近な屋根のあるところまで走ってきた。

足のケガもだいぶ良くなったので、
おれはアメフト部の練習に復帰していたが、
そのとき、突然の雨。

それでも、おだんごの作ってくれたプロミスリングが
かなり濡れてしまった。

よく見たら少しほつれていた。

前は、こんなにほつれていたかな?

なんだか、嫌な予感がする。

雨の音がかなり不穏な予感を掻き立てていた。

*****

大「夜天、月野さん、どうしたんですか?」
わたしは帰ろうと思って昇降口にやってきたが、
そこに夜天と月野さんがいた。

しかし、2人の間に、
微妙な雰囲気が漂っていた。

何かあったに違いない、
わたしはそう直感した。

大「急な雨ですし、月野さんさえよければ
送っていきますよ。
車を回しますね。」
わたしはそういった。

なんとか2人から事情を聴きださなくてはならない、
わたしはそう決心していた。

*****

車の中で、ぼくも月野もなかなか口をきかなかった。

そういえば、この間体育祭が終わった後に、
月野がプロミスリングをぼくたちに持ってきてくれた時も、
車の中はこんな雰囲気だった。

大「どうしたんですか?月野さん。
いつもはいろいろとしゃべってくださるのに。」
大気はそういって、月野になにか話すように促した。

そう、あのときと違うのは、
大気が月野に何か話すよういっているくらいだ。

う「あ・・・、えーっと・・・。」
月野はそう、何か言おうとしたようだが、
それはうまくいっていなかった。

大「じゃあ、いろいろと質問していいですか?」
大気はにこにこしながら言ったが、
ぼくは気が付いた。

大気の目が笑っていないことに。

これは大気の尋問かな。

ぼくは思わずため息をついた。

*****

あたしがあまりしゃべらないので、
大「じゃあ、いろいろと質問していいですか?」
大気さんはそういっていろいろと質問し始めた。

大「夜天と月野さんはどこであったんですか?」
大気さんがそう聞いてきたので、
夜「図書室。
ぼくが大気に頼まれた本を借りに行ったときに、月野がいてさ。」
夜天くんはそう答えた。

大「ああ、そうなんですね。
珍しいですね、月野さんが図書室にいるなんて。」
大気さんは驚いた様子で、そういった。

やっぱりあたしが図書室にいるのって珍しいと思われるんだ、
あたしは複雑な気持ちになった。

一応、夜天くんにしたのと同じ説明をする。

大「いや、そんな手作りのお洋服まで
作ってくださらなくても・・・。」
大気さんは驚いたようだった。

あたしは車の中で夜天くんのほうをちらりと見たが、
あたしにはあまり関心なさそうな感じで、
窓の外ばかり見ている。

さっき、抱きしめてくれそうになったのは何だったんだろう。

あたしはそれがすごく気になっていた。

[newpage]

雨は通り雨だったらしく、
月野を家に送り届けたあたりから、
もうやみ始めていた。

大気は車の中で月野にいろいろと聞いていたが、
ぼくは窓の外を見ながら、
たまに大気のほうーバックミラーに
写っていた大気ーを見ていた。

目が笑っていないうえに、
正直に言って、ぼくと月野の間に何かあったのか、
探りそうな雰囲気だった。

さすがにあの状況では、
(未遂とはいえ)月野を抱きしめたことは
いうに言えなかった。

そもそも、星野も大気も月野のことが好きなのだ。

正直に言って、関係のないぼくが
月野のことを抱きしめるなんてありえない。

それに、星野や大気よりも
むしろ衛さんに悪いと思ってしまったのも気になる。

突然の雨にあてられた、としか思えなかった。

あの時の自分の感情や体の動きが、
自分とは思えず、ぼくは戸惑っていた。

星野、大気、ぼくはきみたちとの絆を壊す気なんかないんだ。

*****

あれから2・3日たって、みんなでレイちゃんの家に集まった。

そして、あたしは思い切って打ち明けた。

あたし、夜天くんのことが好きだってこと。

亜「えー。」
ま「それでそれで?」
美「もっと詳しく聞かせて。」
みんながそう言ってくるのであたしはちょっとずつ説明した。

海辺のホテルに行ったときに、
夜天くんとプールのジャグジーにつかっていろんな話をしたこと。

美奈子ちゃんはうなずいていた。

美「そうよね、うさぎちゃん、夜天くんとプールに行ってたものね。」

ま「美奈子ちゃん、知ってたんだ。」
美「だって、あのときあたしと
うさぎちゃんが同じ部屋だったんだもの。」
まこちゃんと美奈子ちゃんでそんな会話を交わしていた。

そして、山のコテージに行ったときに、夜中に目が覚めて、
夜天くんとコテージの入り口の階段で少し話をしたこと。

それから男の子たちに屋上に呼び出されて迫られた時、
給水タンクから夜天くんが飛び降りて助けてくれたこと。

ま「意外だな、夜天くんにそんなアグレッシブな一面があるなんて。」
亜「やっぱり、夜天くんも男の子なのね。」
まこちゃんや亜美ちゃんは顔を真っ赤にしながら
きゃあきゃあ言っていた。

でも
レ「でも・・・。」
レイちゃんはなにか言いたそうだった。

美「レイちゃん?」
美奈子ちゃんもレイちゃんの言いたいことが気になるようだった。

[newpage]

そして文化祭の出し物のアイディアを出す
2回目のLHRの日になった。

部活に所属している人が、自分の部活の出し物と
かぶらないようにするように、みんな部活が
どんな出し物をするのかを言っていく。

そうすると、必然的に消える出し物が出てくる。

たとえば、焼きそば屋さんとか。

そして、いろいろとアイディアを出していって、
結局、執事喫茶&メイド喫茶にすることになった。

しかも、お客さんとゲームをして、
うちのクラスのメンバーが負けたら、
男子はメイドの恰好、女子は執事の恰好をして、
接客する、という罰ゲーム付き。

去年と同じように、まこちゃんに衣装を作ってもらうことになった。

(ちなみに、あたしが作ってもらおうと思った
まこちゃんの手作りドレスは、
スリーライツの3人が遠慮したので中止になった。)

*****

木野と水野、そして大気も、
衣装作成に参加することになった。

ぼくは正直言ってめんどくさかったけど、
一応喫茶店の雰囲気を出すために、
それなりの背景を描くことになった。

月野も背景係になった。

愛野は衣装デザイン、星野はBGMの係になった。

まあ、そんなわけでぼくや月野、
それから美術に自信のある何人かの
背景係でいろいろと素材集めをすることになった。

とりあえず、コンセプトは決めなければならないので、
みんなで図書室に集まった。

この学校の図書室には話し合いをするためのスペースがある。

そこへ集まり、あーだこーだと話し合った末に、
コンセプトは宇宙になった。

宇宙・・・、か。

まあ、ぼくが異星人だというのは秘密だが、
ある意味得意分野と言えなくもないかもしれない。

そしてまた月野と帰りが一緒になった。

今日は雨が降っていないため、
普通に月野と歩いて帰ったが、
月野があまり口をきかない以外は
そんなに前と変わらない様子だった。

やっぱり何かあの時のぼくはなんか普通じゃなかったんだ、
ぼくは、そう自分を納得させようとしていた。

でも、もしも・・・。

月野が星野か大気のどちらかを選んだら・・・。

そんな考えが頭をかすめ、
ぼくの胸が痛くなった。

ずきん・・・。

月野がどちらかを選ぶ、
そう考えただけで、
どうしてぼくはこんなに動揺しているんだろう。

その理由にぼくはまだ気が付いていなかった。