映画の後のお食事の後、
ちょっとお茶でも、ということで
あたしたちはスリーライツの家にお呼ばれした。

☆★ お食事会への招待 ☆★

家に戻るタクシーはおれと大気と夜天、
それにおだんごが一緒に乗っていた。

もちろん、これもおれと大気の条件を
同じにするためだ。

でも、正直言って腑に落ちない。

観覧車で思ったことをもう一度思う。

どうして夜天のことばかり気にするんだ、おだんご?

*****

わたしはタクシーの助手席に座ったが、
後部座席のほうがきになった。

ちらりとバックミラーで見てみるが、
星野が抜け駆けする様子は見られなかった。

しかし・・・。

わたしは今まで自分のライバルは
星野だと思っていたが、
先日からの月野さんの態度を見ていると、
別のライバルがいるような気がしてならなかった。

どうして夜天のことばかり気にするんですか、月野さん。

*****

タクシーの中は正直、
拷問のような気がした。

星野の視線が痛いような気がした。

なんだか大気もバックミラーで
こちらの様子をうかがっているような気がする。

それもこれもあの金色のおだんご頭のせいだ。

確かに夏休みに楽しんでいるか、
いろいろと気にかけてもらったことには感謝している。

でも、正直言ってぼくは家の中がぎくしゃくするのが
すごくいやなんだ。

いったいぼくはどうすればいいのか、
どうにもできない気持ちを抱えて、
ぼくはため息をついた。

*****

大「みなさん、いらっしゃい。」
大気さんはにこにこしてあたしたちに
リビングのソファを勧めた。

そのまま大気さんはキッチンへお茶をいれにいった。

せーやと夜天くんは着替えにお部屋に一度戻っていった。

美奈子ちゃんがあたしを手招きした。

美「ねえ、うさぎちゃん、どうなのよ?」

美奈子ちゃんからそう言われたものの、
あたしは美奈子ちゃんが何を聞きたいのか
わからなかった。

う「えーっと・・・。」
あたしはごまかそうとしたが、
レ「うさぎ、星野くんと大気さんのこと、
どっちがいいと思ってるの?」
レイちゃんからもそう聞かれた。

レ「今、この場で答えるようなことでもないと思うから、
こんどうちにきて話してちょうだい。
今の正直な気持ちでいいから。」

レイちゃんからそうぱしっと言われた。

*****

やがて大気さんがお茶とお菓子をもってやってきた。

せーやも着替えてやってきたが、
夜天くんがいない。

う「あれ?夜天くんは?」
あたしがぽそっというと、
星「夜天のやつ、疲れたらしいから
もう寝るってさ。」
せーやはそう答えた。

大「まあ、映画にお食事と、
夜天にとっては刺激が
強かったかもしれませんからね。」
大気さんもそう答えていた。

夜天くんは繊細なので、
映画の大音量の音で
かなり疲れてしまっているのだろう、
そう大気さんは教えてくれた。

大「さ、ではみなさん、どうぞ。」
大気さんはあたしたちにお茶とお菓子を勧めてくれた。

亜「すごくおいしいお茶ですね。」
亜美ちゃんは大気さんのお茶に感動していた。

ま「このマドレーヌ、
すごい評判のいいお店のなんですよね。」
まこちゃんもそんなことを言っていた。

美「そんなにすごいの?」
美奈子ちゃんが聞いていたが、
ま「だって、日によっては
午前中で完売しちゃうって聞いてたから。」
まこちゃんがそう答えていた。

大「さすがですね、木野さん、よくご存じで。」
大気さんもそう答えた。

大気さんによると、このマドレーヌも
先日差し入れでいただいたものらしい。

たしかにものすごくおいしいマドレーヌだったので、
最初は恐縮してしまったが、
大「まあ、おいておくと悪くなってしまうので、
遠慮なく食べてください。」
大気さんのその言葉に、
あたしたちはおいしくいただいた。

~~~~~

そして何日かたった後、
あたしたちは火川神社に集合した。

予想通り、美奈子ちゃんとレイちゃんが
せーやと大気さんのアプローチについて
きいてきた。

美「ねえ、うさぎちゃん、星野くんと大気さん、
本当にうさぎちゃんのことが好きなんだと思うの。
うさぎちゃんはどう思ってるの?」
美奈子ちゃんのその言葉に、
う「・・・、どうっていっても・・・。
あたしせーやと大気さんは全然友達で・・・。」
あたしはそう答えるので精いっぱいだった。

ま「観覧車の時はなにか話したのかい?」
まこちゃんがそう聞いてくるので、
あたしはせーやとも大気さんとも
夜景がきれいだって話をしたことを話した。

レ「それだけ?」
レイちゃんはまだ何かあるんじゃないかと
いうような感じで聞いてきたが、
あの時はそれ以上のことは何もなかったので、
そう答えるしかなかった。

しいて言うなら、降りた後に
夜天くんから魔性の女って言われたことぐらいだけど、
魔性の女のことについては
亜美ちゃんとまこちゃんには話しているし、
今はそれ以上なにもいうことはなかった。

レ「まあ、何もないならないでいいんだけど。」
レイちゃんの声はなんとなくくもっていた。

亜「それよりも今度のお食事会、
どうするか考えないと。」
亜美ちゃんはそう言った。

そう、映画の後でスリーライツの家に行ったときに、
あたしたちはお食事に誘われたのだ。

*****

せーやと大気さんが誘ってきたのは
リュバン・フルールという
フランス料理のレストランだった。

フランス語で「花のリボン」という意味らしい。

なんでここに誘われたのかというと、
先日スリーライツが出たバラエティ番組で
賞品としてここのお食事券がもらえたのだという。

1枚で4人分、スリーライツ1人1人に1枚もらえたので、
1枚はあたしとスリーライツで、1枚は美奈子ちゃんたちで使うことにし
残った1枚ははるかさんたちにあげることにした。

昨日、そう電話したら、ほたるちゃんがすごく喜んでいた。

それにしても、そのレストランはとても格式が高いのだという。

何を着ていくか、あたしたちはそのことで頭がいっぱいだった。

~~~~~

そして、ついにその日がやってきた。

学校から一度家に帰って着替えていった。

あたしはピンクのドレス、
みんなはイメージカラーのドレス、
亜美ちゃんは青、レイちゃんは赤、
まこちゃんは緑、美奈子ちゃんは黄色の
ドレスを着ていた。

スリーライツの3人はタキシードを
ばしっと決めていた。

黒い蝶ネクタイをしているだけで、
すごくスリーライツの3人が
雲の上の人のように思えてくる。

そして、いよいよあたしたちは入店した。

*****

ク「上着をお預かりします。」
クロークの人のスマートな接客に
あたしはどぎまぎした。

昼間はまだ残暑が強いけど、
やっぱり秋なだけに夜は少し涼しいので、
亜美ちゃんとレイちゃんは薄手の上着を着ていた。

そして2人はなんの抵抗もなく上着を預けていた。

やっぱり、2人はこういう店に慣れているのではないか、
あたしとまこちゃん、美奈子ちゃんはそうささやきあった。

*****

あたしたちは4人掛けのテーブル2卓、
スリーライツとあたしで4人掛け、
美奈子ちゃんたちで4人掛け。

あたしの向かいがせーや、隣が大気さん、
せーやの隣で大気さんの向かいが夜天くんだった。

そしてあたしの席は美奈子ちゃんたちのテーブル側にしてもらった。

あたしの隣がレイちゃん、レイちゃんのとなりが美奈子ちゃん、
美奈子ちゃんの向かいが亜美ちゃん、そのとなりがまこちゃんになった。

(あとで聞いたところによると、
レイちゃんと亜美ちゃんのどちらでも
すぐにまこちゃんや美奈子ちゃんの
フォローに回れるようにこの席にしたという。)

飲み物のメニューを見せてもらったけれど、
すごく高くて一瞬水でもいいのではないかと思ったけれど、
スリーライツの3人が心配しなくていいというので、
あたしはオレンジジュースを頼んだ。

お魚料理もお肉料理も選べるらしいけど、
何を選んだらいいか、わからなくて、
オードブルはマリネ、
お魚料理はサケのムニエル、
お肉料理は無難にステーキにした。

「オードブルでございます。」
「パンをどうぞ。」
「お魚料理でございます。」
「お肉料理でございます。」

ウエイターさんが1品食べ終わるごとに、
次のお料理を持ってきてくれて、
ついでにお料理の説明もしてくれる。

最初は場違い感がすごくて、
オレンジジュースの味もわからなかったけど、
せーやと大気さんがいろいろと助け船を出してくれて、
なんとかオードブルの味はわかるようになった。

大気さんはくすくす笑っていた。
大「月野さん、おいしく食べてくれることが
料理人の方にとってはうれしいはずですよ。
どうぞ、いつものようにおいしそうに食べてください。」
大気さんはやさしくそう言ってくれた。

*****

やがて食後の飲み物とデザートの時間になった。

ウ「コーヒーと紅茶、どちらになさいますか?」
ウエイターさんが1人1人に聞いていた。

せーやはコーヒー、大気さんは紅茶を頼んでいた。

大「夜天はどうしますか?」
大気さんが聞いていた。

夜「うん・・・、あの、ノンカフェインの飲み物ないですか?」
夜天くんはそう聞いていた。

ウ「申し訳ないのですが、当店では取り扱いがございません。」
ウエイターさんはすまなそうに答えていた。

大「では、夜天は紅茶にしますか?」
大気さんはそう聞いていた。

夜天くんはカフェインがだめで眠れなくなってしまうそうだ。

そんな夜天くんが安心して飲めるものがあればいいのに、
あたしはそう思っていた。

そして、あたしが夜天くんを無意識に目で追っていることに
あたしはまだ気づいていなかった。


こんにちは。Lilac(ライラック)です。

今回は映画の話の続きから。

今回は魔性の女(?)うさぎは影をひそめてます。

ここのところ、うさぎが魔性過ぎて申し訳ありませんでした。

今回は安心して読めるかと・・・。

高級料理店のエピソードは
このシリーズで書きたかったエピソードの1つです。

少しでも楽しんでいただけたらうれしいです。