星「いやあ、楽しかったな。」

星野は「雨の木」からの帰り道、

そんなことをのんきに言っていた。

 

☆★ 勝負の時 ☆★

 

レ「まったく、どういうつもりなのかしら。」

レイはため息交じりに言った。

 

星野はまずあの店に似合う人間になることから始めるといっていたが、

レイとしてはちゃんと真意を知っておきたかった。

 

星「まあ、まずは送っていくから。

立ち話はなんだろ。」

星野はそう言って、さっさと火川神社のほうに足を進めていく。

 

結局、ほぼ無言で火川神社まで来てしまった。

 

レ「ねえ、寄ってくんでしょ。」

レイのその一言に、星野は嬉々として火川神社に上がり込んだ。

 

そしてレイは玄米茶をいれてくる。

最初のうち、煎茶や番茶、ほうじ茶などいろいろなお茶をいれてきたが、

星野はあるメーカーの抹茶入り玄米茶が一番好みなのが分かってきた。

 

レ「さて、どうするつもりなのか、今度こそ聞かせてもらうわよ。

もうはぐらかされないから。」

レイは詰め寄った。

 

星「まあまあ、そう怒るなって。」

星野はなだめはじめた。

 

星「まずは作戦の第一弾だ。」

星野のいうところによると、

まずはあの店に足しげく通い、

常連になることを目指すのだという。

 

星「今日のようにショーになったりするのは

計算外だったが、まあ、あんな感じで

ほかの客に味方になってもらうのもいいんじゃないかと思うんだ。」

そうして、常連になった暁には

あの店のオーナーを味方につけるようにしたい、

そう語った。

 

レ「大丈夫かしら。」

そもそもあの店は父が常連なのだ。

 

オーナーが父派なのであれば、

そう簡単にはいかないのではないか。

 

レイにはそう懸念があった。

 

しかし、

星「でも、そこはまだわからないだろう。

まずはそこの空気感だけでも

わかるだけでも、次の一手をどう打つかの

参考になるかと思う。」

星野は自分の意見を譲らなかった。

 

~~~~~

 

というわけで、星野が仕事のない日と

レイの弓道部の練習がない日が重なるときは

極力「雨の木」に行くことになった。

 

大「なるほど、ある意味外堀から埋めていくんですね。」

夜「ま、せいぜいがんばってみたら。」

大気と夜天の反応は正反対だった。

 

大「もしなんでしたら、わたしもこっそり

眺めに行くかもしれませんよ。」

大気はあきらかに面白がっていた。

 

星「勝手にしろよ。」

星野はあきれ顔だった。

 

でも、正直言って、あの店の客たちに

味方になってもらうのもいいかもしれない、

星野はそう思い始めていた。

 

 

夜「だからって、なんでぼくたちが

いっしょにいかなきゃいけないのさ。」

夜天はしぶっていた。

 

大「まあ、いいじゃないですか。

月野さんとのデートの場所の下見にも

なるかもしれませんよ。」

大気にそう説得され、

今日は大気と夜天が様子を見に行っていた。

 

夜「ほぼのぞきじゃん。」

夜天は不満顔だった。

 

大「まあまあ。

どうですか、夜天。

月野さんとのデートで使う気になりませんか?」

大気はそれとなくなだめようとする。

 

夜「ここはあいつにとっては高級な感じがするよ。」

夜天の答えに大気は確かにもう少し庶民的な店のほうが

うさぎのイメージに合う気がした。

 

そのとき

大「ほら。」

大気が店の真ん中にあるグランドピアノの方向を指した。

 

夜天がみたときはちょうどレイが

グランドピアノの前に座ったところだった。

 

「火野議員の娘さんだって噂だよ。」

「ああ、知ってる、スリーライツの星野と婚約したんだよね。」

そんな風に周囲の客たちが噂する。

 

そんな噂は2人に優しい感じがした。

 

やっぱり、この店の客は常連客が多い、

そしてこの間のレイと星野の演奏を見たものも

おおかったのだろうと推測がついた。

 

1回だけでも星野とレイは

すでにこの店の客を味方につけている。

 

大気はそう感じていた。

 

~~~~~

 

ギ「火野さま、今日もお運びいただきまして

ありがとうございます。」

この店のギャルソンが恭しくレイに頭を下げる。

 

ギ「星野さま、今日もいらっしゃいまして

ありがとうございます。」

ギャルソンは星野にも頭を下げた。

 

レイに先に頭を下げたので、

ギャルソンの中ではレイのほうが序列が高いのだろう。

 

レイのほうが通っている回数が多いので

仕方ないか、と星野はなんとなく納得していた。

 

ギ「最近は火野さまのピアノを目当てに

いらっしゃるお客様も増えてまいりました。」

ギャルソンはレイをほめた。

 

レ「そんな・・・。」

レイは恥ずかしがって顔を赤らめたが、

まんざらでもなさそうだった。

 

ギ「実はオーナーが今日はお2人にお話があるとのことです。」

 

ギャルソンの言葉に2人はどきんとする。

 

オーナーが味方になってくれるかどうかで

この後の計画が変わってくる可能性がある。

 

レイは星野に目くばせした。

 

星野もレイの意図が分かった。

 

レ「がんばりましょう。

これからが本番よ。」

 

レイの言葉に星野も立ち上がった。

 

ギャルソンに導かれて2人はオーナーのいる事務所へ向かう。

 

勝負の時が迫っていた。

 
 
こんにちは。Lilac(ライラック)です。
 
星レイです。
 
相変わらず需要のない話です。
 
今さらですが、この話は月夜の二人シリーズの
スピンオフの「赤い星々」の続編ですので、
月夜の二人シリーズの前提で進みます。