ほんとうのさいわいをさがしに 4
文芸部室のある旧校舎の四階は遠かった。
そこまでの道のりを、ゆっくりと歩いていく。
部室に近づくたびに、もしかして七星は部室にいるんじゃないかって思えてきた。
もちろん、ただの妄想だ。
僕の都合のいい空想でしかない。でも、そうだといいなって思いながら歩いた。
部室の前に辿り着いた。
深呼吸をしてドアに手をかけた。少し手が震えていた。
ゆっくりとドアを開けると、そこには――
いた。
七星はいつもの席に座って本を読んでいた。
彼女は本に視線を落としたまま、顔も上げなかった。
それでもいい。
僕は後ろ手にドアを閉めた。
「七星」
呼びかけると彼女の肩がぴくりと小さく震えた。
「七星、聞いて欲しいことがあるんだ」
「……」
彼女はそれでも顔を上げない。
なにから話そう。
七星が本を取り替えたことも聞いてみたい。
どうしてジョバンニのセリフに赤線を引いたのか、その真意も尋ねたい。
でも、その前に言いたい。
「好きだ!」
弾かれたように七星が顔を上げた。
彼女はびっくりした瞳で僕を見つめていた。
動揺したのか、読んでいた本を落としてしまったことにも気づいていないみたいだった。
〔つづく〕
登場人物
水無瀬弘海 主人公(みなせひろみ)
高群 七星 主人公と同じ部活の後輩
鈴木 彰 ひたすら筋トレを誇張する、主人公の友人
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編集掲載・緋鷹由理