とぅるー はぴねす  (42ページ) | 緋鷹由理 

緋鷹由理 

たぬこと熊太の徒然日記を主に掲載しています。

闇の中  7

 

半分のハンバーガーはすっかり冷え切っていて、氷の溶けたジュースは水っぽく薄まっていた。

こんな気持ちになるなら、恋人のフリなんてするんじゃなかった。

こんなに苦しい思いをするなら、人を好きになんてなりたくなかった。

……気づくのが遅すぎたんだ

話していたら、鼻の奥がつんとした。情けない話、視界が涙で滲んでいる。

僕は話していて喉が渇いたので、ジュースをすすった。

水っぽくてマズかった。

俺はさ

今まで黙っていた彰が口を開いた。

俺は今までお前に黙っていたけど、本当は――」

本当は?

筋トレが好きなんだ

……あ、うん。知ってたけど

むしろ僕がその事実を知らなかったように言うのが意外だ。

彰の筋トレ好きは皆の知るところなのに。

そうか、知ってたか。さすが俺の親友だぜ。

つまり、俺の筋トレ好きを知ってるってことは、当然知っているだろうけど、俺の恋人は筋肉なんだ。

筋肉だけが俺の彼女さ

……いや、それは知らなかったよ

むしろ知りたくなかったよ。

と、言うかなぜ筋肉の話になったんだ?

俺は筋肉しか愛したことねぇから、ヒロの気持ちはわからねぇ。

なんてったって、俺は女を好きになったことがないからな

彰はどこか誇らしげに言う。

それ程までに筋肉を愛しているらしい。

 

〔つづく〕 

                                                             

登場人物

水無瀬弘海   主人公(みなせひろみ) 

高群  七星   主人公と同じ部活の後輩

鈴木  彰    ひたすら筋トレを誇張する、主人公の友人


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草薙香(くさなぎかおり)  の小説


編集掲載・緋鷹由理