闇の中 7
半分のハンバーガーはすっかり冷え切っていて、氷の溶けたジュースは水っぽく薄まっていた。
「こんな気持ちになるなら、恋人のフリなんてするんじゃなかった。
こんなに苦しい思いをするなら、人を好きになんてなりたくなかった。
……気づくのが遅すぎたんだ」
話していたら、鼻の奥がつんとした。情けない話、視界が涙で滲んでいる。
僕は話していて喉が渇いたので、ジュースをすすった。
水っぽくてマズかった。
「俺はさ」
今まで黙っていた彰が口を開いた。
「俺は今までお前に黙っていたけど、本当は――」
「本当は?」
「筋トレが好きなんだ」
「……あ、うん。知ってたけど」
むしろ僕がその事実を知らなかったように言うのが意外だ。
彰の筋トレ好きは皆の知るところなのに。
「そうか、知ってたか。さすが俺の親友だぜ。
つまり、俺の筋トレ好きを知ってるってことは、当然知っているだろうけど、俺の恋人は筋肉なんだ。
筋肉だけが俺の彼女さ」
「……いや、それは知らなかったよ」
むしろ知りたくなかったよ。
と、言うかなぜ筋肉の話になったんだ?
「俺は筋肉しか愛したことねぇから、ヒロの気持ちはわからねぇ。
なんてったって、俺は女を好きになったことがないからな」
彰はどこか誇らしげに言う。
それ程までに筋肉を愛しているらしい。
〔つづく〕
登場人物
水無瀬弘海 主人公(みなせひろみ)
高群 七星 主人公と同じ部活の後輩
鈴木 彰 ひたすら筋トレを誇張する、主人公の友人
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編集掲載・緋鷹由理