蒼紺のベール 第七章 翔の逆襲(42ページ) | 緋鷹由理 

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たぬこと熊太の徒然日記を主に掲載しています。



仕上げ 1

 翔は、美夕が良く着ていた服を用意し、美夕の格好を真似てみた。

体は翔のほうが大きくなっていたが、きゃしゃな体つきと、面立ちは、美夕にそっくりだ。

そして、色つきの眼鏡をかけると、翔もおどろくほど、美夕に似ていた。

極めつけは鈴だ。いつも母がちりちり鳴らしていた鈴の音は、懐かしかった。

中学校が、午前授業の日、翔は美夕の服を持って、宗の家に向かった。家の裏側の、あまり人目につかないところで着替え、コートを羽織ると色つき眼鏡と鈴を取り出し、玄関へ回った。玄関に鍵が掛かっていたので、外から中を覗いてみると、奈津美はコタツの中で、うたた寝をしていた。

空いているところがないか、探していると、勝手口が空いていた。

勝手口から中に入るとコートを脱いで、奈津美に近づき、鈴を鳴らした。

チリリン・チリリン 鈴の音で奈津美が目を覚ました。そして翔の姿を見ると、驚いて飛び起きた。あらかじめカーテンを閉めておいたので、部屋の中は薄暗かった。

翔が、チリリンと鈴を、鳴らしながら、翔は奈津美を見つめた。

ほんの五分ほどの出来事である。

しかし、奈津美にとってこの五分は長かった。奈津美はこの五分の間に大変な妄想を起こし、混乱していた。

立ったままの翔を見ながら、

「お願い、来ないで。」

とつぶやく。奈津美はジリジリと、後ずさりしていく、

「ごめんなさい、あなたが死ぬとは思わなかったのよ。」

間をおいて

「宗ちゃんとは三年、いえ五年程前からの関係よ・・・

でも、その前はただのお客だったのよ。宗ちゃんは飲みにも来るし、・・・保険にも入ってくれて・・・」

奈津美はジリジリ下がりながら、話続けた。

「あなたの保険も、宗ちゃんが入ったのよ、私がすすめたわけじゃないの。

それに、私は、ただ宗ちゃんに、一緒に暮らしてほしいっていっただけで、

まさか、それで、あなたが死ぬとは思ってなかった。」

さらに後ずさりしながら、

「離・離婚すれば良かったじゃない・・・あなた宗とはうまくいってなかったんでしょう。・・・しかも、あのお父さんと、お姑さんだもんね。わかるわ・・・・苦労したんでしょう。

 勘違いしないで、離婚は宗が望んだのよ・・・  わたしがそうしてほしい、なんて、い・言ったんじゃないんだから・・・ お願い・・ わかって・・・」

そして、部屋の隅に、追い詰められて、ジタバタもがきながら、

「イヤー! もうこないでー!! お願いだから許してエー!!!」

と叫んでいた。

登場人物

 高原 美夕(みゆう)     母親、病死して幽霊になる

 高原 翔(しょう)       長男、中学1年

 高原 麗美(れみ)   長女、小学6年   

 高原 由宇(ゆう)      次男、小学2年

 高原 亜姫(あき)     二女、幼稚園5歳

 高原 礼(れい)       祖父、(有)たかはらの社長

 高原 ユミエ        祖母、

 高原奈津美(なつみ)    後妻

 高原 宗(そう)      父親、(有)たかはらの専務

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草薙香  グランディオ・学園祭

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私の父 草薙香のお爺さん

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