茜「ていうか、頼まれごとはいいの?できればその話、私も聞きたいんだけど」
友香「もちろん、茜も聞いていいんだけど____」
____キュルルルルル……
お腹が鳴ったのは誰か____と考える間もなく分かった。
茜「友香……」
友香「お腹空いたから、食べながらがいいなぁ~」
茜「……私が作り置きするから、たくさん作ってるの知ってて言ったでしょ?まあ、いいけどさ……」
友香「やったぁ!!」
綺良「いただきまーす」
茜さんのお言葉に甘えて椅子に飛び乗り、村山を隣に座らせる。
茜「美羽ちゃん、だっけ?美羽ちゃんは食べられないものとかないの?」
綺良「多分ないと思います。基本何でも食べてるので」
茜「じゃあ普通に、美羽ちゃんの分も用意するね」
茜さんが再びキッチンに向き合ったところで、私は菅井さんと向き合った。
友香「この子が、例の子?」
綺良「はい。村山美羽って言います」
茜「……例の子、って言い方何?すごい物騒なんだけど」
友香「そのうち説明するし分かるから、いちいち突っ込まなくていいよ、茜」
茜「だって……気になるものは気になるじゃない」
料理をしていてもすぐに反応してくるなんて……やっぱりさすがは鬼軍曹。恐るべし……
友香「こんにちは、美羽ちゃん」
美羽「……こんにちは」
菅井さんが挨拶すると、小さな声で少しぶっきらぼうに村山は挨拶を返した。
友香「あれ、結構人見知りタイプ?」
綺良「そうやと思います。愛想いいタイプでもないんで」
友香「じゃあ、綺良ちゃんには似つかないか〜」
茜「いや綺良ちゃんに似つかない方がいいでしょ。綺良ちゃんが二人に増えたらもう手に負えないし」
綺良「……茜さん?それどういうことですか?」
茜「そのまんまの意味よ!これから綺良ちゃんに振り回されるであろう、美羽ちゃんの将来が心配だわ……綺良ちゃんのことで悩んだら、いつでも相談していいからね?」
料理を運びながら、茜さんは村山の手を取ってそう言った。
綺良「いや村山、困ってますやん。むしろ、何か怖がってません?」
しかし村山は、少し怯えながらコクコクと頷いた。
茜「はあ?誰が怖いって____「はいはいはい!!お腹空いた!!早く食べよ!!」
菅井さんが指揮を執ることで、茜さんの言いかけた言葉は終わった。
友香「じゃ、いただきまーす……ん~!焼き芋おいし~!さっすが、茜!!」
綺良「いただきまーす……ん、ほんとですね。美味しいです」
茜「まあ、今が旬だからね。多めに買っておいて良かったわ……」
綺良「村山もはよ食べな?うまいで?」
私は焼き芋を半分に割ってから、村山に差し出した。
美羽「……いただきます」
ぱくっ、と可愛い効果音をつけたくなるような、小さな口で村山は焼き芋を口に運ぶ。
茜「どう、かな……?」
三人で村山を見守る。その中には心配も混じっていたけれど、それは杞憂に終わるようで____
友香「すごい、食欲旺盛!!めっちゃ食べるね!!」
村山はものすごい勢いで、もぐもぐと焼き芋を食べ始めた。
綺良「焼き芋、好きなん?」
美羽「分からない、けど……美味しい。もっと、食べたい……」
あっという間に村山の手から焼き芋は消え、次の焼き芋へと手を伸ばし始める。
茜「たっくさんお食べ~!!すくすく育つんだよ~?」
友香「茜、もうお母さんじゃん」
茜「まあ一応、綺良ちゃんのお姉ちゃんやってるんで」
綺良「ああ、そういえばそうでしたね」
茜「ちょっと!!そういえばって何よ?」
焼き芋に食欲旺盛な村山と一緒に、食卓を囲む。
私には経験がないけれど、もしかしたらこれが、家族団らん、ってやつなのかな。
まあ、私たちは本当の家族じゃないけど……