綺良「まあとにかく……申し訳なかった、ってこと。私が不器用じゃなければ、もっと早く村山に事の顛末を伝えられただろうから」

 

美羽「別にもう、気にしてませんって。増本さんにこれ以上謝られたら、怖いです。明日隕石落ちてきそうで気味悪いです」

 

 何なら、明日が命日になるくらい気味が悪い。

 

綺良「気味悪いて村山____「あー!!それよりも!!」

 

 さすがに増本さんの逆鱗に触れてしまったようで、私は話題を変えようと大声を上げた。

 

美羽「この羽根のこと、調べていただいた方って誰なんですか?私が知ってる方ですか?」

 

綺良「____いや、村山の知らん人や。今遠くに行ってて、そう会える人でもないし」

 

美羽「そう、ですか……」

 

 お礼を言いたかったけれど、会えないのなら仕方ないか……

 

綺良「ああ、せや。その人な、村山のこと『天使みたいで可愛いー!!』って、会う度に言うとったわ。それに、そのときから村山は不器用やったし、私も不器用やったから、それにちなんで村山のこと『不器用な天使ちゃん』とか言っとったな~……懐かしいわ」

 

美羽「不器用な、天使……?」

 

 増本さんのその言葉を聞いて、テレパシーのように何かが伝わってきた。

 

綺良「村山?どしたん?」

 

美羽「私……分かったかもしれません……特攻魔法の、名前」

 

 箱に入っている、黒い羽根を見つめながら、私は頭をフル回転させる。

 

美羽「____セット!!」

 

 私は立ち上がって目を閉じると、胸の前で櫻のポーズを作る。

 

美羽「クラムジーエンジェル____」

 

 不器用な天使____クラムジーエンジェル。

 

 きっと、これだ____

 

美羽「……ぉ」

 

綺良「おお!!村山!!」

 

 自分の感覚でも、増本さんの声でも分かった。

 

美羽「増本さん!!できました!!」

 

 目を開けると____私の体には確かに、あの頃と同じ黒い羽根が生えている。

 

綺良「やったな、村山」

 

美羽「はい!!」

 

綺良「これで村山も不器用を卒業____「え待って!!何!?」

 

 増本さんが言いかけたように、これで不器用を卒業できたかと思えば____

 

美羽「何か勝手に浮いちゃうんですけど!!自分でコントロールできないんですけど!!」

 

 なぜか自分でコントロールができず、どんどん上に飛んで行ってしまう。

 

美羽「ドンッ!!……いっ、ったぁ……!!」

 

 しまいには、天井に思い切り頭をぶつけてしまった。

 

綺良「やっぱり、不器用卒業はまだまだやな」

 

美羽「そんなぁぁ!!」

 

 ……なんて、増本さんの前では叫びながらも。

 

 心のどこかでは、まだ不器用なままでいいのかも、と思っている自分がいた。



 不器用な方がきっと、まだまだたくさん成長できるから。


 増本さんや同期のいる櫻坂で、これからも成長したいと思うから。