何か、攻撃できる呪文は____

 

 考えろ、私……

 

美羽「____ブラック!!」

 

 え、ちょっと、待って……自分でもびっくりなんだけど。

 

 確かに黒好きだし、黒い服ばかり着てるし……羽も黒いし。

 

 でも、自分で考えた結果出てきたのがこの呪文____魔法なのだから、自分なりに使ってみよう。

 

美羽「って……真っ黒」

 

 ブラックという名の通り、辺り一面は暗闇に覆われていた____

 

 正しく言えば、小さな黒い羽根が辺り一面に舞っていた。

 

美羽「こ、う……?」

 

 私が手をかざして動かしていくと、敵を包むような、覆うような形になる。

 

 これなら、きっといける____

 

 直感的にそう思った。

 

美羽「お願いッ……!」

 

 手に力を込めて、一気にその手を開くと____

 

美羽「消え、た……」

 

 目を開けると、羽根は消え、敵の姿も跡形なく消えていた。

 

美羽「……よ、し」

 

 やったんだ、私。やれたんだ。

 

 やるべきことをやれた。守るべきものを守れた。

 

 肩の力を抜いて、ゆっくりと私は地上に戻る。

 

 地面を踏みしめる感触が、とても久しぶりのように思える。

 

美羽「リ、セ____」

 

 特攻魔法を解くために、呪文を唱えようとしたとき。

 

 急に体の力が抜けて、平衡感覚を失った。

 

 それと同時に意識が薄れてきて、ああやっぱりこれが私の最期なんだな____と悟った。

 

「「危ない!!」」

 

 完全に意識を失う前に、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

____「美羽!!」

____「美羽ちゃん!!」

____「村山ちゃん!!」

 

 この声は……麗奈や増本さん、土生さんの声じゃない____ということは。

 

 誰かに支えられている気がして、私は目を開けてみる。

 

「意識ある!!」

 

美羽「夏鈴、さん……」

 

 倒れかけた私を守ってくれたのは____夏鈴さんだった。

 

「ほんと!?」

「良かった……」

 

美羽「瞳月と……松田さん方まで……」

 

 すぐそこには、瞳月と松田さん、小池さん、幸阪さんもいた。

 

美羽「応援の、無線……ちゃんと、届いてたんだ……」

 

瞳月「ほんまに来るの、遅れてごめん……」

 

美波「でもしーちゃんがおったから、うちらがすぐ来れたんやで」

 

美羽「応答してくれたのが、瞳月でほんと、よかった……ありがと」

 

 色んなことがありすぎて、応援の存在を忘れていたけれど、瞳月がいて本当に良かったと思う。

 

里奈「敵は!?」

 

美羽「倒しました……なので、早く、三人をお願いします……」

 

茉里乃「____綺良ちゃんと土生さん、攻撃受けてからまあまあ時間経ってます。早く治療しないと」

 

美波「結構ひどく攻撃されたんやな……」

 

里奈「麗奈にはもう準備してもらってるから、ムーブで戻ろう。着いたらすぐ、医務室送って」

 

「「了解」」

 

里奈「夏鈴は村山ちゃんお願い」

 

夏鈴「分かった____掴まってて」

 

美羽「ありがとう、ございます……」

 

 私は夏鈴さんに抱きかかえられたまま、ムーブで拠点へと戻った。