ある日の朝。

 今日も先輩たちに見守られながら、魔法の特訓を行う。


 ____『今私が使ってるような、基本魔法以外の魔法を使うのはちょっと特殊でな。実力どうこうの問題やないねん』


 ……いつの日か増本さんに言われた、基本魔法以外の魔法は特殊だということ。

 

 当時は自分に実力がないからだと思っていたけれど、増本さんが言っていたことは事実だった。

 

 シールドやソード、フライといった魔法……応用魔法は、櫻坂に入ることで身に付けられる特殊な魔法だったのだ。

 

 今はその応用魔法を身に付けるため、私たちは特訓を重ねている。

 

愛季「ソード!……えいやぁぁぁ!!」

 

瞳月「シールド!……あ待ってミスった、ストップぅぅぅぅ!!」


 そんな中で、愛季と瞳月は二人で一緒に、ソードとシールドの特訓をしているようだ。

 

 突っ走っていく愛季の手には、鋭い剣。


 しかし、愛季に対抗しようとした瞳月は、間違った場所に盾を展開している。

 

愛季「ええ!?急に言われても止まれないって!!」

 

 いつの間にか、剣に勢いを奪われた愛季。


 自分の力では制御できず、瞳月へとどんどん加速していき、三期生の誰もが最悪の結末を想像したとき。


____「ウィンディ!!」

 


____ビュンッ‼


 

ひかる「セーフ……危ない危ない……」

 

 森田さんが放った、強力な風によって二人は引き離される。


 いや、引き離されたというより、飛ばされることで衝突を避けた。の方が正しい。

 

愛季「森田さんっ……ぅぅ」

 

瞳月「ありがとうございますっ……!!」

 

 命を救われた二人は、きゅるきゅるなお目目で森田さんを見つめながら感謝を述べた。

 

ひかる「……よし。剣に勢いを奪われないためにも、正確な盾を展開するためにも、特別レッスン開講しますかぁ〜」

 

「「ほんとですか!?」」

 

美波「あの三人、みんな小っちゃくて可愛ええなぁ……」

 

冬優花「何あの空間……めっちゃ癒される……」

 

保乃「ひぃちゃんすっかり先輩になってるやん……」

 

唯衣「いやあなたも先輩なのよ?」

 

 こんな風に、先輩方は平和に魔法を教えたり、見守ったりしてくださる。

 

晶保「……あ。あっちで綺良ちゃんが何か教えてるー」

 

茉里乃「……どうせロクなことやないで」

 

 ……そう。

 

綺良「だから違うて!村山ぁ!」

 

 増本さんを除いては、の話だ。

 

美羽「違うって言われても、何が違うか私には……」

 

綺良「だからぁ、ドーンでバーン、やって!!」

 

 フライの説明が、ドーンでバーン、とは?

 

美羽「擬音語で言われましても……」

 

 中学生の頃に魔法を教わったときは、もっと丁寧だったと思うんだけど……

 

 あれってやっぱり、幻想ですか?

 私が勝手に、思い出を綺麗に上書きしただけですか?

 

増本「もー、ちょっとぉ。小田倉ちゃん見てみ?もう習得しとるで?」

 

 増本さんが指差す方向を見ると。

 

小田倉「藤吉さーん!飛べましたぁ~」

 

 麗奈が妖精かと言わんばかりに、上空を上手く飛行していた。

 

夏鈴「おお、やるやん」

 

 少し冷徹に返している夏鈴さんだけど、喜びというか……照れている表情を隠しきれていない。

 

夏鈴「ターンは?」

 

小田倉「ええっと……こう、ですか?」

 

 夏鈴さんに与えられた課題を、麗奈はそつなくこなしていく。

 

夏鈴「できとるやん。すご」

 

小田倉「ほんとですか!?」

 

守屋「ええー!!麗奈ちゃんすご!!」

 

梨名「習得するのめちゃくちゃ速いやん!!」

 

 他の三期生を見守っていた先輩方も、麗奈に注目している。

 

綺良「村山も少しは、小田倉ちゃん見習ったらどうなん?」

 

美羽「……はぁい」

 

 そっちこそ教え方見習ったらどうですか、なんて言えるわけがなかった。